皆様、今晩は。
「過去の検証記事再アップ」企画、3回目の今回は「2199における地下都市の考察」というテーマの検証です。
これは2199公開当時からあった「地下都市がきれい過ぎる」という指摘に対して、星巡る方舟公開後に私なりに見解をまとめたものです。
最後の続編の予想については完全に不的中でしたが、まあ「時間断層」なんて普通は思いつきませんよね・・・(苦笑)
2199に対する不満として、地下都市の描写が綺麗過ぎるというものがあります。
確かに、完全に追い詰められて末期的な印象が強かったオリジナルの描写と比較して、2199の地下都市の描写は整然としており、それほど追い詰められたという印象は受けません。
このような表現が使ってよいかは分かりませんが、あえて言うならば、戦時下の描写というよりも被災によって仮設住宅で生活するようになった人々という印象を受けます。
このような描写の変化は、オリジナルが製作された当時は、先の大戦の記憶が生々しく残っていたのに対し、2199が製作された現在は、先の大戦は「記憶」ではなく「知識」でしか知らない人のほうが多く、加えて東日本大震災などをはじめとして、被災による避難生活のほうがより身近なものであったという事情があったと思われます。
しかし同時に、2199の設定から見ても、あのような地下都市の描写は実は非常に正しいと思われます。
地下都市建造の事情が異なるオリジナルと2199
ガミラスによる遊星爆弾の攻撃により、同じように地下に建造した都市での生活を余儀なくされているオリジナルと2199ですが、その地下都市が建造された経緯は大きく変更されています。
オリジナルではガミラスの遊星爆弾から逃れるために「初めて」建造された都市であるのに対し、2199ではガミラスとの戦争が始まる以前に起きた「火星独立戦争」(地球から独立しようとした火星と地球との武力衝突)において、火星側からの攻撃から逃れるために建造した都市とされています。
この違いは非常に大きいです。
いってしまえば、オリジナル版の地下都市は攻撃の最中に掘った「蛸壺」に近く、当然のことながら十分なインフラや物資を整える時間も余裕もありません。
一方、2199の地下都市は十分にインフラが整えられた常備シェルターと言えます。
加えて、2199ではこの地下都市への避難が遊星爆弾の攻撃が始まる前から始まっています(17話「記憶の森より」の新見の回想より)
このような避難においては、戦争の遂行や篭城に必要な設備や物資の備蓄も計画的に行われているため、避難した人々の生活もオリジナルと比べてもある程度余裕のある生活を送ることができるはずです。
良し悪しは別にしても、2199の地下都市の描写がオリジナルと比べて小奇麗であるのは、「十分インフラが整えられた地下都市に計画的に避難した」という設定上、それほどおかしいことではないと思われます。
(補論)補論:なぜ暴動が絶えなかったのか
しかし、オリジナルの地下都市と比べて遥かに恵まれた環境にある2199の地下都市においても暴動は絶えません。
実際、第1話で南部が電光掲示板に表示された暴動情報を見て、「また暴動か」とうんざりしているほどそれは日常化しているようです。
オリジナルと異なり、ある程度生活の余裕があるにもかかわらず、なぜこのように暴動が絶えないのでしょうか?
それはやはり広いとはいえ、地下という密閉された空間に長期間生活を余儀なくされていることによるストレスの増大、そしてまったく明るいニュースのない戦況、そして残り時間1年というタイムリミット(物資が尽きるというわけではなく、地球そのものが生活できない環境になるという意味)などの理由からくる精神的な要素が原因と考えるべきでしょう。
しかし、ここで注目したいのは暴動が頻発していることそのものではなく、これほど暴動が頻発しておりながらも、きちんと統治機構は維持され、治安がコントロールされているという事実です。
これはやはり、地下都市で生活している人々は本当の意味でまだ追い詰められているわけではなく、暴動は起きても拡大までにはいたらなかったからだと思われます。
実際、2199の映画である「星巡る方舟」ではタイムリミット間近に迫った地球の様子が描かれましたが、人々の暴動は空間騎兵隊が発砲して鎮圧しなければならないほど切羽詰ったものになっていました。
2199で地球が救われた理由は、ヤマトがコスモリバースシステムの取得に成功したことが第一ですが、もう1つ、地下都市の物資がタイムリミット間際まで秩序が維持できるほど備蓄されていたことも理由に挙げるべきでしょう。
おそらくオリジナル版のような地下都市であった場合、ヤマトの帰還を待たずに地球に残った人々の自滅で終わったっという可能性も高かったと思います。
地下都市の設定変更が高める続編の可能性
ギリギリ感の少ない地下都市の描写は、オリジナルのファンからすれば不満であったことは容易に予想できます。
かく言う私自身も多少物足りなかったのは事実ですが、物事には何事も良い面と悪い面があるもので、この設定描写は続編を製作する場合、非常にプラスに働きます。
オリジナルの続編である「さらば」や「2」の世界観における最大の問題は、復興してわずか1~2年で、アンドロメダをはじめとして大艦隊を整えるほど復興できるかという点でした。
しかし、2199の地下都市設定の場合、日本だけでなく大国も国力を温存していたので、短期間で復興できたという設定にすることができます。
また問題の大艦隊構想も、確かに1~2年で整えることは不可能ですが、地下としにこもっている間、来るべき反抗作戦などに備えてヤマトに匹敵する新造戦艦を建造していた・・・という設定でクリアすることができます。
2199の地下都市は絶望感などが確かに失われたかもしれませんが、その代わり、続編の扉を開くことはできる。
この意味では決して悪い変更ではなかったと思います。
コメント
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地下都市の描写で一番絶望感があったのは実写版ヤマトですかね?
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宇宙船ヤマトは、人口千人の閉鎖空間内の町の様な宇宙都市といえます
同様の技術水準で造られた地球の地下都市も、ガミラスの攻撃が無ければ、自給自足可能で平和な生活の場となり得ます
こちらのお話を読んで、狭くて暗くて怖くて「せまいよ~くらいよ~こわいよ~」の地下都市から、明るく清潔で住み優しい地下都市にイメージリフォーム出来ました
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コメントありがとうございます
> 地下都市の描写で一番絶望感があったのは実写版ヤマトですかね?
間違いなくそうだと思います(小説版はもっと生々しい描写も出てきますし)
もはやあのレベルまで達すると秩序の維持はもはや難しいでしょうね、正直なところ。
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2202で地球の人口が3分の1になってしまったと
、しかし復興の仕方を見ると1億や5億ではなく、30億くらいいたのではないか。とするとガミラスとの戦い以前は80〜100億くらいとなると、あの地下マンションも相当建てなければ避難施設にはならない。そのボリュームを作るには時間断層でもないと難しそうに思えますが。
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ぺんぺん草様、コメントをありがとうございます
> 宇宙船ヤマトは、人口千人の閉鎖空間内の町の様な宇宙都市といえます
そういえばそうですね~
伊達に「イズモ計画」用として建造された元脱出船ではないというところでしょうか?
狭ささえ我慢できれば生涯そこで生活できそうですよね。
> 同様の技術水準で造られた地球の地下都市も、ガミラスの攻撃が無ければ、自給自足可能で平和な生活の場となり得ます
> こちらのお話を読んで、狭くて暗くて怖くて「せまいよ~くらいよ~こわいよ~」の地下都市から、明るく清潔で住み優しい地下都市にイメージリフォーム出来ました
おお、面堂 終太郎の名台詞が出てくるとは。
とはいえ、オリジナル版の地下都市もあれはあれで中々高度な都市ですよね。
ほかにコメントで指摘されている方もおりますが、一番終末感漂うのは間違いなく実写版だと思います。
実写版のヤマトは希望の象徴として描かれていましたが、そりゃああんな場所で滅びを待つしかないなら絶望しかないでしょうね。
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kazu様、コメントをありがとうございます。
> 2202で地球の人口が3分の1になってしまったと
> 、しかし復興の仕方を見ると1億や5億ではなく、30億くらいいたのではないか。とするとガミラスとの戦い以前は80〜100億くらいとなると、あの地下マンションも相当建てなければ避難施設にはならない。そのボリュームを作るには時間断層でもないと難しそうに思えますが。
恐らくですが、地下都市は2199で描かれた場所だけではなく、他にも似たような都市が日本各地や世界中に点在しているのだと思います。
それに建造が始まったのは火星独立戦争の頃ですし、この戦いでコロニー落しのような作戦も行われたとの設定があることから、地球サイドは戦後も緊急事態を想定してこの地下都市建造を続けていたのではないでしょうか?(あと公共事業という側面もあったと思われます)
火星独立戦争は玲が子供の頃という話ですから、恐らく15年ほど前。
それからずっと建造・拡張工事を続けていればガミラス戦争頃にはそれなりの規模が完成していても不思議はないと思います。