地球は何故事前説明を怠ったのか

皆様今晩は。
今回は前回アップした「沖田艦長の約束は口約束だったのか?」の続きです。
前回の記事をまだ読まれていない方は、先ずはそちらを読まれたうえでこちらの記事をお読みください。

さて、2202における地球を取り巻く状況を考えると、「波動砲艦隊」の実現は必要不可欠であったことは間違ありません。
しかしここで地球が問題なのは、「イスカンダルとの約束」を一方的に破って「波動砲艦隊」を実現したことです。
イスカンダルが地球を救ってくれた恩人であることは間違いなく、その恩人との約束を破るならば、最低でも「こういう理由で波動砲は地球に必要です」と事前に説明する(同意を得る必要まではない)程度の義理は果たしべきでした。
実際、事前にイスカンダルに説明を果たすことは多くのメリットがあります。

筋を通したほうがメリットが多かった?

まず国内的には「無用な派閥抗争の回避」が可能です。
イスカンダルとの約束を破って波動砲艦隊構想を強行したことにより、地球防衛軍は芹沢たちを中心とする「波動砲艦隊推進派」と土方を中心とする「波動砲艦隊反対派」の派閥抗争を引き起こし、後々までしこりを残すことになりました。
もしイスカンダルにしっかり事前に説明責任を果たしたうえで波動砲艦隊構想を推進したのであるならば、このような深刻な対立は回避できたはずです(もっとも土方の11番惑星赴任は別の理由で行われたと思われます。これについては後日改めて考察します)

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また対外的には「地球は信頼できる星」であることをアピールことをができます。
実は、2202で地球は「自分の利益」の為には「恩人との約束」も平気で破る星と同盟国であるガミラスに思わせ、不信感を与えかねない深刻な危険性を帯びています。
元々「ガミラス戦争」による相互不信は存在していますが、地球・ガミラス軍事同盟が地球の国防のために不可欠な存在である以上、地球の方からその不信を増やすことは慎むべきでした。
もし「波動砲艦隊」を事前にイスカンダルに説明していた場合は、基本的に地球は約束を守る星であり、波動砲に関しては状況的に守れなくなったという事をイスカンダル・ガミラス双方にアピールできます。
勿論、イスカンダル(というよりスターシャ)は良い顔はしないでしょうが、ガトランティスとの戦いが激化している状況をしっかり説明すれば、場合によっては波動砲解禁の黙認を得られる、あるいはもっと別の解決策を提示される可能性もあった事を考えると、ここは地球は筋を通したほうが実はメリットが多かったと思います。
それではなぜ、地球は事前の説明をせず「イスカンダルの約束を破って波動砲艦隊構想の実現を強行する」というある意味悪手をやってしまったのか。
これについてはいくつかの理由が考えられます。

イスカンダルへの不信説

これは昨年12月にこのテーマについてスベルグ様と議論した時にスベルグ様が提供された説です

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私もこれは結構正しいのではないかと思います。
また、この件に限らす2199におけるイスカンダルは以下のような地球サイドに不信感を持たせるような発言や行動を行っています。
・イスカンダルとガミラスが双子星であることを黙っていた事
・ガミラスの正体を知りながら地球サイドに黙っていたこと
・ユリ―シャが勝手に岬百合亜の体を乗っ取って活動していた事

これらの事は、山本をはじめとして少なくない数のヤマトクルーにさえもイスカンダルに対する不信感を与えています。

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勿論、スターシャやユリ―シャに悪意があったわけではありません。
特に重要な情報を黙っていたことも、彼女たちなりに合理性があったから黙っていただけであり(単に「聞かれなかったから」という理由もあるかもしれませんが)、結果的には確かにそれらはプラスに働いています。
しかし、人間というものは正しければ納得できるという訳ではなく、特に善意であっても隠し事をされるのは酷く嫌います。
これらの事で地球人のイスカンダルに対する悪感情が増えるのは仕方がないことです。
加えて、イスカンダルは「救うに足る存在であるかを確かめる」など一貫して上から目線で地球に接しています。
地球サイドからしてみれば、地球を救うためにはイスカンダルに他にすがるほかなかったこともあってそのような態度も我慢したでしょうが、内心では自尊心を傷つけられ、かなり面白くなかったと思われます。
イスカンダルは恩人であるだけに露骨に批判する事は出来ませんが、「波動砲艦隊構想」を機に地球がイスカンダルに対して内心で貯めていた不信や鬱憤が反発心として一気に爆発し、事前説明をしないという結果を産み出したのかもしれません。

事前説明をしている暇がなかった説

この説はそもそも状況的に説明する時間的余裕がなかったという説です。
地球も時間的余裕があればイスカンダルに事前に説明し、了解ないし暗黙を取り付けたかったかもしれませんが、不運にもガトランティスの行動が活発化しており、早急に波動砲艦隊構想を実現する必要がありました。
筋を通してイスカンダルの了解ないし黙認を取り付けてから行動を起こしていては手遅れになるか可能性が高かったために、「悪い」とは内心思いながらも無視をすることにしたのではないでしょうか。
実際、2202では芹沢の主導で波動砲艦隊を計画を強硬に推し進めたからこそ、ガトランティスとの本格的な開戦前に十分な戦力を整えることができました。
どちらかというと沖田や土方寄りの考えを持つ藤堂長官や山南艦長が「イスカンダルに対する説明を怠ったこと」に対して沈黙をしていたのも、状況的に本当にやむを得なかったという側面があったのかもしれません(だからこそ第3話での古代の「沖田艦長にそれを言えますか」との台詞に対して藤堂長官も答えることができなったのでしょう)。

地球に驕りや慢心が生じていた説

また、時間断層の全貌を把握し、その内部に作った大工場が稼働し始めたことで、波動砲艦隊を無尽蔵に作ることができるようになった地球は、自分たちも気づかないレベルで驕りや慢心が出始めていたのかもしれません。
波動砲艦隊が実用化された場合、強大なガミラスとも対等、あるいはそれを以上の力を地球はもつことが可能であり、その欲望の前に完全におぼれてしまった可能性があります。
事実、軍人としても人間としても人格者と言っても問題がない山南艦長ですら、第5章まで波動砲艦隊の力に魅了されていた側面がありました(だからこそ第6章で自分の誤りに気がつく流れになるわけですが)。
波動砲艦隊という力を手にしたことで地球には驕りが出てしまい、さらに現在のイスカンダルは独自に軍事力を有しておらず、約束を破っても報復される心配もないので「事前に言い訳をする必要は無い」と冷酷に考えてしまったのかもしれませんね。

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以上が地球がイスカンダルに対する事前説明を怠ったとして考えられる理由です。
あるいはこのどれかではなく、これらの全ての要因が重なった結果、一方的にイスカンダルとの約束を反故にするという結果につながったのかもしれませんね。

コメント

  1. オールドタイマー より:

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     若しかしたら事前説明が出来る状態にまで成らなかったのかもしれませんね。

     何故そう考えたのかと言うと…。
     ヤマトの地球帰還後、地球はイスカンダルと沖田艦長とが結んだ波動砲禁止条約に関して細部を詰める協議はしていたはず、そのついでに使用出来る条件を地球側は探っていたと思うのですよ。
     ですがイスカンダルというかスターシャ猊下は生粋の波動砲アレルギー、どんな条件を付けようとも絶対に使用はおろか保持すら認めなかったと思うのです。
     ですので事前説明などは夢のまた夢、記事に有ったオーバーロード的なイスカンダルへの不信感も相まって条約締結すら暗礁に乗り上げた、のではないかと。

     そしてガミラスに与える不信感なのですが、ひょっとしたら裏取引が成立していて問題に成らなかったのではないでしょうか。
     メダルーダ級と遭遇したバーガー達がガミラス本星に帰還した際、火焔直撃砲の脅威を当然報告したはず。
     アレは一隻だけなら余り脅威にはならないのですが、「2202」冒頭の通り複数になると途端に危険度が増すのですよねぇ、対抗するには波動砲が一番有効では、通常兵器では射程外な訳ですし。
     ですので地球に泥を被ってもらい、ガミラスが供与されたという形で波動砲搭載艦を手にいれる、見返りは植民惑星の割譲と資源と技術の供与で裏取引が成立。
     拡散波動砲の開発にガミラスが噛んでいる以上、そう考えるのが自然と私は思います。

     長文失礼しました、では。

  2. 山城2199 より:

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    オールドタイマー様、コメントをありがとうございます!!

    >イスカンダルというかスターシャ猊下は生粋の波動砲アレルギー、どんな条件を付けようとも絶対に使用はおろか保持すら認めなかったと思うのです。

    これは確かにありそうです。
    スターシャ猊下は未来ではなく過去に生きている人物ですから、まともな説得は不可能。
    むしろまだガニラスの政治に関わり現実を見ているユリ―シャの方が説得しやすいかもしれません。
    ユリ―シャに説明→ユリ―シャからスターシャに話を通してもらう、というのが最適解なのかも・・・
    これについては実は、デスラー総統の似たことをやっています
    2199でデスラー総統が大統合を宣言した時、スターシャではなくユリ―シャ(実は雪ですが)の合意をもって推し進めようとしています。
    これは基本的にスターシャ本人への説得は無理であること、さらにイスカンダルの意志は3人の姫のいずれかの合意があれば許容されるという慣例があったのかもしれませんね。

    >そしてガミラスに与える不信感なのですが、ひょっとしたら裏取引が成立していて問題に成らなかったのではないでしょうか。
    波動砲計画を取り巻く軍需産業の人間の中に明らかにガミラス人が混じっていることから、ガミラスが一枚かんでいる事は間違いないと思います。
    ただこれが政府レベルなのか、現場レベルなのかが分かりません。
    政府レベルで噛んでいるのなら、ガミラス政権の中にユリ―シャもいることから本来は波動砲問題が表面化する事は無いはずなんですよね・・・
    ちなみにシナリオ段階ではガミラス人はいなかったそうなので、演出を変えたことによってシナリオと矛盾が生じてしまったと考えても良いかもしれません。