沖田艦長の約束は口約束だったのか?

皆様今晩は!
今回は以前から気になっていた「波動砲艦隊構想の正当性」について詳しく検証してみたいと思います。
ちなみにこのネタにはTwitter上でお世話になっているスベルグ(@13FB092144)様と、昨年12月に「なぜ、地球は波動砲艦隊を建造をイスカンダルに無断で行ったのか」というテーマで議論したことがベースになっております。
私かスベルグ様をフォローしている方はもしかしたらご存知かもしれませんね。

さて、220において地球連邦が進めていた「波動砲艦隊構想」について、バレル大使と芹沢副長はアンドロメダ級4隻の就役式典(第2話)で次のような会話をしています。20210102_img001.jpg【ローレン・バレル】
「危険な火遊びだと忠告させていただきます。恩人であるイスカンダルとの約束を反故にしてまで」

【芹沢】
「そう、あれはいち宇宙戦艦の艦長が独断でした口約束です。条約ではないし、地球の意志でもありません。」


この二人の会話で、この「波動砲艦隊構想」が「イスカンダル」に無断で押し進めている事と、それを正当化している地球側の論理が判明します。

「波動エネルギーを武器に転用しない」とイスカンダルの女王スターシャに約束した沖田艦長はCRSを受け取るという任務を帯びた「宇宙戦艦ヤマト」の艦長にすぎず、地球の全権大使ではない。
故に彼がした約束は、あくまでも彼個人の約束であって、地球が守らなければならない理由はない。

これが「波動砲艦隊構想」を正当化する地球の論理です。
しかし、2199を改めて見直してみると、実はこの論理はかなり厳しいものがあります。

沖田艦長は「いち宇宙戦艦の艦長」ではない

まず沖田艦長は「いち宇宙戦艦の艦長」と言い切れる存在では決してありません。
というのも、彼がヤマトのイスカンダル航海で行った様々な判断には明らかに「いち宇宙戦艦の艦長」の権限を越えたものが含まれています。
例えば「反デスラー派との協力交渉」や「ガミラスとの休戦協定の締結」などは、「ガミラス戦争」を左右するものであり、普通に考えて「いち宇宙戦艦の艦長」が独断でして良いものではありません。
20210116_img002.jpg
沖田艦長は自分の立場をしっかり心得ていた人物であり、勝手にこのような越権行為をしていたとは思えません。
となると、事前に沖田艦長には政治的・外交的判断も含めた「CRSを入手するために必要と思われるあらゆる行為を行うことが許される権限」が授与されていたと考える方が普通です。
また、イスカンダルに到着した際、イスカンダルサイドと様々な交渉が予想されてしかるべきですが(地球もCRSが無条件で譲渡されるとは思っていないでしょう)、その交渉を任務とする使節団などはヤマトに乗り込んでいません。
つまり、イスカンダルの交渉もまた沖田の任務の1つであったと思われます。
以上の事実を考えると、沖田艦長は単に「宇宙戦艦ヤマト」の艦長というだけではなく、地球サイドの全権大使として面も持ち合わせていたと考えられます。
実際、沖田十三の公式の身分は、国連宇宙軍宙将(=大将)であり、実戦部隊の事実上のトップです。
このキャリアであるならば「全権大使」としての権限を与えられても少しも不思議はありません。

「地球・イスカンダル和親条約」の存在

また、芹沢副長は「独断でした口約束」としていますが、実は「地球イスカンダル和親条約」という条約が沖田とスターシャの間で正式に調印されています。
この事は、「波動砲口」に挿入された封印プラグに記された注意書きにも書かれています。
20210116_img001.jpg
この「地球イスカンダル和親条約」がどのような内容であったかは不明ですが、「この条約に基づいて波動砲が封印」されたことを考えると、その内容の1つに「波動エネルギーの軍事転用の禁止」が含まれていたことは間違いありません。
以上の事実を踏まえると、「波動砲艦隊構想」は、事実上の全権大使が正式に調印した条約を完全に違反するものであり、客観的には完全にアウトです。

強弁せざるを得なかった芹沢

おそらく「波動砲艦隊構想」が完全にアウトであることは芹沢自身も十分理解していたと思われます。
実際、「いち宇宙戦艦の艦長が」とヤマトの艦名も沖田の名前も出していないのは、その後ろめたさからくる心理だったのではないかと思われます。
それでも芹沢があえてこのように強弁したのは、「波動砲艦隊」が地球に防衛にとって必要不可欠なものであると確信していたからにほかなりません。
もしかしたら、「あれはいち宇宙戦艦の艦長が独断でした口約束です。条約ではないし、地球の意志でもありません。」というセリフはバレルに対する答えというよりも、自分自身にそう信じ込ませたかったのかもしれませんね。
では、「波動砲艦隊」が地球の防衛必要であるとそこまで確信しているならば、何故、事前にイスカンダルにその理由を説明して理解を求めなかったのか。
その理由について次回詳しく考察してみたいと思います。

コメント

  1. ファビウス・ルンド より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    始めまして、ヤマトの記事をいつも楽しみながら拝見し、ヤマトについて何か考える(妄想する)上で常に参考させていただいております。
    さて、地球イスカンダル和親条約ですが、沖田艦長になんらかの外交上の権限が与えられたのは間違いないと思いますので、芹沢氏の「口約束」というのは言い過ぎだと思いました。そのうえで、この条約は空文化していますが、現在の状態として、全権の沖田艦長が署名した「条約」が地球議会で承認されず批准に至らないケースは考えられないでしょうか?地球側の考えとして「安全保障上、波動砲は必要」という意見は政府、国民を問わず、存在すると思います。これが多数派だったらこの条約批准は難しいと思いました。(もちろん信義則には反しますから地球の信用はガタ落ちしますが)この時、沖田艦長の資格について「ここまでの権限は認めていない」という議論もありえたと思います。もっともこれは外交上なんともおさまりの悪い状態です。それをなんとなく安定させたのが地球とガミラスとの講和+同盟条約だったのではないでしょうか?イスカンダルの望み通り地球とガミラスの戦争は終わります。また、ガミラスも今後、防衛戦争はあっても侵略戦争はない。また、ガトランティスの戦力は非情に大きい。苦しいですけどイスカンダルに対する言い訳ですね。これでもって何とか波動砲関係について黙認を勝ち得たとしたら・・・そして、これを纏めたのが2202の大統領だったとかいう展開もありなんじゃないでしょうか?全部たらればでコメントを書いてしまいました。長文になり失礼しました。

  2. 山城2199 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    ファビウス・ルンド様、初めまして!
    コメントをありがとうございます!!

    確かに条約の場合、議会が承認しなければ効力は発効しないというのが国際法の常識です。
    ただここで問題なのが、その論理が異星間での条約にも通用するかは甚だ疑問です。
    特に2199年時点ではイスカンダルはある種の絶対王政、ガミラスは独裁政(のちに軍政に移行)を採用していましたので、「承認がないから批准していない」という地球サイドの論理は通用しない可能性が高いです。
    芹沢がそもそもかなり強引に約束自体を無かった事にしたのも、そうしなければ「イスカンダルとの約束」は条約として有効であるという事情があったのではいかと思います。
    まあこれも私の勝手な推測なので何処まで正しいかは甚だ疑問ですが(苦笑)

    この様に好き勝手に妄想を繰り広げている当ブログですが、今後ともよろしくお願い致します!