シナリオ篇から振り返る2202その1

皆様今晩は。
現在、「全記録集・シナリオ篇」を絶賛熟読中です(笑)
いやあ、この本は本当に良い。
9割がテキストと言うとんでもない内容ですが、読み返せば読み返すほど新しい発見がありますね。
せっかくですので、当分は他の考察を全て中止し、このシナリオ集と見比べながら2202の全編を振り返ってみたいと思います。(内惑星戦争の考察の続きを楽しみにしていた方は申し訳ございません)

今回は第1話「西暦2202年・甦れ宇宙戦艦ヤマト」についてです。

流れが違う第1話

以前から話には聞いていましたが、シナリオ版とアニメ版ではかなり描写が異なるというのは本当でした。
勿論大筋は同じなのですが、 細かい点がかなり違うため、アニメ版とはかなり違う印象を受けます。
アニメ版と大きく異なる点としては
①冒頭のテレザート攻撃の内容が異なる
②Aパートの浮遊大陸戦の流れが違う
③ヤマト復活の流れが違う

の3つをあげることができます。

①冒頭のテレザート攻撃の内容が異なる

まず第1話冒頭、ガトランティス軍がテレザートを攻撃する様子が描かていましたが、アニメ版では自動兵器であるニードルスレイブを大量投入しての無差別殺戮だったのに対し、シナリオの段階ではザバイバル率いる地上部隊(戦車部隊+歩兵部)の攻撃によって制圧される流れだったようです。
またこの時点で艦隊を指揮するゴーランドと地上部隊を指揮するゴーランドと言う、ガトランティスきっての猛将二人が顔見世しており、ガトランティスの圧倒的力を見せ付ける展開が予定されていたみたいです。
【何故変更されたのかの考察】
はっきり言ってしまえば尺不足と作画の手間によってこのシーンは変更になったものと思われます。

まず尺不足ですが、アニメ版でもテレザート攻略はOP代わりとして描かれため、この短い時間で詳細な攻略の様子を描くことは不可能だったと思われます。
サーベラーなどの側近たちですら顔見世程度に一同が集結しているところが僅かに描かれるのがやっとでしたので、当分出番のないゴーランドやザバイバルなどのシーンがカットされてしまったのはある意味仕方が無かったと思われます。

次に作画の手間についてですが、、シナリオどおりにザバイバルの陸戦部隊を登場させた場合、兵士や戦車などを多数書き込まねばならず、多くの予算と労力が必要となります。
恐らくそれを避け、以後も、負担と予算を減らせるようにCGで製作されたニードルスレイブという地上兵器を登場させたと思われます。

確かにガトランテイス兵の代わりにニードルスレイブという兵器を登場させたことは製作時間の短縮など製作の面では大きなメリットがあったことは間違いなかったでしょう。
しかし、この兵器の登場によって、兵士と兵士の戦いと言う緊張感が無くなり、2202の戦闘シーン全般が面白みがなくなってしまったという点は否めません。
結果論ですが、ニードルスレイブと言う兵器を生み出し、以後も多用したことは完全な失敗であったと思います。

②Aパートの浮遊大陸戦の流れが違う

第1話のメインとなる浮遊大陸戦の戦いは、アニメとシナリオでは次のような違いが確認できます。
(アニメ)
・浮遊大陸戦に参加した地球艦隊はかなりの大艦隊
・先鋒は強襲型ゼルグートを用意したガミラス軍で、地球艦隊は基地奪回要員
・古代の相原への叱責理由は強襲型ゼルグードのデータ収集を勝手にやろうとしたこと
・ガミラス軍が苦戦しているところに勝手に古代の「ゆうなぎ」が乱入、大暴れする
・大戦艦は謎の巨大十字架の中に隠されていた
(シナリオ)
・浮遊大陸戦に参加した地球艦隊はそれほど多くない
・ガミラス軍を指揮するルーゲンスが被害が多数予想される地球艦隊に先鋒を押し付ける
・古代の相原への叱責理由はガミラス艦をあだ名で呼んだこと
・隊列を組んで戦う地球艦隊は被害が大きい割りにガトランテイスの防衛線を突破できていなかったので、古代の「ゆうなぎ」が突貫、突破口を開いたことで流れが変わる。
・大戦艦は普通に後方にいた伏兵

この浮遊大陸戦に限っていえば、アニメ版よりもシナリオ版のほうが非常に納得できる流れです。
同盟を結んで一緒で戦う関係でありながら、地球艦隊を単に消耗品として扱っているガミラス軍に対し、そんなガミラス軍に不審を抱いている地球軍という構図が後のアンドロメダ登場時の「これでガミラスも地球を見直すでしょう」の台詞の伏線になっています。

またアニメ版のように相原のデータ取りに対し古代が「友軍艦艇には敬意を払え」と注意をするのには、多少違和感がありましたが、友軍艦を正規な艦名ではなく(ガミラスへの反発から)あだ名で呼んだことに対する注意ならば非常に納得できる台詞です。

【何故変更されたのかの考察】
ではなぜ、このシナリオの流れがアニメのような流れに変更されてしまったのか。
この原因は間違いなく小林副監督のアレンジであると思われます。
小林副監督はシナリオ段階では存在していなかった強襲型ゼルグートを登場させ、恐らく自分がデザインしたその艦の見せ場を作るために先鋒を地球軍からガミラス軍に変更してしまったのではないかと思われます。
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この変更で恐らく一番割を食ったのは間違いなく古代君です。
シナリオでは、他のクルーがガミラスのへ反発を隠さない中、感情と任務を切り離し、単独でガトランテイスの防衛線を食い破ると言う優秀な艦長振りを見せていたのに対し、アニメ版の古代君は良く分からない理由で相原を注意し、基地奪回の任務が与えられているにもかかわらず、単艦で前線に突入するなど良く分からない言動になってしまっています。
要するに浮遊大陸戦における古代君の言動は全て地球軍が先鋒をガミラス軍から押し付けられたことによって成り立っていたのであり、その前提を変更するならばその後の古代君の言動も変更しなければならないのに、それを怠ってしまったのは残念の一言です。
もし2202の再編集版が製作されるならば、浮遊大陸戦はシナリオどおりの流れに変更したほうが良いのではないかと思います。
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③ヤマト復活の流れが違う

第一話のクライマックスは地球に特攻を仕掛けてくる大戦艦を大改装中のヤマトが撃破するシーンですが、このヤマト再起動の流れもシナリオとアニメ版では異なっています。
アニメ版では
真田が独断で準備→司令部の雪を通じて古代にヤマトで迎撃する話を伝える
という流れですが、
シナリオでは
古代がヤマトで迎撃する案を思いつき→司令部の雪を通じて真田に依頼する
と流れが逆になっています。

【何故変更されたのかの考察】
私の好みで言えば、シナリオの流れの方が好きですが、ストーリー上の流れとしてはアニメ版のほうが正しいと思います。
というのも、後の話で、古代君はヤマトへの波動砲再装備を巡って真田さんと対立してしまったという設定が出てくるので、何のためらいも無く真田さんに迎撃を依頼するというのはおかしな話です。
また、大戦艦が地球への特攻を始めている中で古代君が真田さんに迎撃を依頼したとなると、その時点で迎撃の準備をヤマトが始めることになります。
もし真田さんへの連絡が手間取ったり、連絡がつかなかった場合は、迎撃が間に合わなくなります(また準備に手間取っても同様)。
以上のことを考えるならば、大戦艦の迎撃準備は真田さんが独断で迎撃準備を進めていたと考えるほうがしっくり来ます。
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結論

第1話に関しては最後のヤマト迎撃の流れだけはアニメ版は良い変更をしたと思いますが、それ以外の点はシナリオどおりに製作してほしかったと言うのが正直な気持ちです。
公開当時、この第一話でいきなり失望したと言う声を結構な数、リアルで聞いていましたが、このシナリオどおりならばこの声はかなり減らせたのではないか?
この第14話シナリオはそう思える内容だけにつくづく残念です。