波動砲艦隊計画反対論は理想論だったのか?

皆様、今晩は。
今回は以前から考えていた「波動砲艦隊計画反対論」の正当性についてまとめてみたいと思います。

2202において、「波動砲艦」を主力とした地球連邦軍再建計画について、古代君たち旧ヤマトクルーは地球軍内部でも特に影響力を土方さんを中心に「波動砲艦隊反対派」ともいうべき派閥を形成し、強硬に反対していたとされています。
作中において反対論の根拠は「イスカンダルとの約束」しか触れられていない為、古代君たちの波動砲反対の主張は現実を見ない理想論と視聴者から見られがちです(正直に言うと私もそうでした)
しかし、仮にもイスカンダルまで航海し、天の川銀河や大マゼラン銀河の状況を他の誰よりも知ることになった古代君たちです。
彼らが主張していた波動砲艦隊計画反対論は本当に現実を無視した理想論だったのでしょうか?
このような疑問を感じ、改めて2202における地球の置かれた状況を考えると、「波動砲艦隊計画反対論」はそれなりの説得力があったのではないかと考えを改めました。

脅威ではなかったガトランティス

そもそも地球とガミラス双方から当面の敵と認識されていたガトランティスですが、2202第1章時点では地球やガミラスにとってそこまで脅威とは思われていなかったはずです。
確かにガトランティスの本隊が白色彗星という巨大な移動要塞とガミラスをも超える大艦隊を有しているヤバイ存在であるという事は視聴者の視点では判明していますが、劇中の登場人物にとってはそれは全く知らない情報です。
むしろ2201第1章の時点では、地球にとってもガミラスにとっても、ガトランティスは不定期に暴れまわる宇宙海賊的な存在であり、その戦力は決して軽視は出来なものの波動砲抜きでも十分に対処できる存在でした。
事実、ガトランティスの方面艦隊であったダガーム艦隊は波動砲を封印されたヤマトとガミラスの警務艦隊との共同作戦で殲滅に成功しており、対ガトランティス戦に「波動砲が無くても大丈夫」というのは十分に説得力があったはずです。
当時の地球には波動エンジンを搭載した改コンゴウ級、改ムラサメ級を主力とした防衛艦隊が既に整備にされており、イスカンダルの信頼を裏切るような「波動砲艦隊計画」を実現しなくても、対ガトランティスを想定した戦力としてはこれで十分と古代たちが考えていてもそこまでおかしな話ではありません。
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波動砲開発拡大の不安

また古代君たち波動砲艦隊反対派が恐れたのは、地球が波動砲艦隊を整備することによって波動砲開発競争が宇宙規模に広がる事だったのではないでしょうか。
もし地球が波動砲艦隊を整備した場合、その対抗策としてガミラスやその他の勢力(ボラー)などが波動砲の開発・配備を行う可能性は十分にあり得ます。
イスカンダルとしても、地球が波動砲艦隊を整備している以上、他の星々が波動砲を開発・所有する事を止めることは出来ません。(そのことを分かっていたからこそ、スターシャは波動砲所有の例外を認めるわけにはいかず、ヤマトの波動砲に難色を示したのかもしれません)。
そしてもしこのような波動砲開発競争が始まってしまった場合、地球にとってもかなり不味いことになります。
というのも、そもそも地球はガミラスやボラーといった星間国家と比べて国力的にも技術的にも完全な後進国であり、波動砲艦開発という同じ土俵に乗ってしまったのなら必ず敗北します。
確かに地球は他国に先んじて波動砲艦隊を所有する事により一時的な優位性は確立できますが、そのような状況はすぐにひっくり返され、逆にいつ地球に波動砲を撃ちこまれるか分からない状況に怯えることになりかねません。
あるいは古代君はイスカンダルとの約束を破ることが将来、地球に災いをもたらすことを直感的に確信していたからこそ、頑なに波動砲を否定し、イスカンダルとの約束を守ろうとしたのかもしれません。
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波動砲反対論は理想論ではなかった

2202でこのような「波動砲艦隊」がもたらす影響が表面化しなかったのは、テレザートの力を手に入れ強化されたガトランティスが太陽系に侵攻するという誰もが予想していなかった緊急事態が発生したからに他なりません。
もしそれが無ければ地球の波動砲を恐れたガミラスやボラーと緊張関係を生み出すことになり、やがて互いに波動砲を撃ちあう未来が待っていた可能性は十分にあります。
このように考えると古代君たちが行っていた波動砲艦隊反対論は現実を無視した理想論という訳ではなく、しっかりと現在の地球の状況や未来を考えた極めて説得力のあった反対だったのではないでしょうか。
それゆえ芹沢さんを中心とした「波動砲艦隊推進派」も反対論を無視する事ができず、反対派の旗印であった土方さんを11番惑星に転出させ、旧ヤマトクルーも人事権を駆使してバラバラにするというやや強引な手法で黙らせたのではないかと思われます。

2199で始めて波動砲を使用した時、沖田艦長は波動砲を「禁断のメギドの火を手にしてしまった」と独白していました。
それは「波動砲」という兵器が持つ影響力の大きさをまさに的確に表したものだったと思います。