第4章感想その3(13話)

皆様、こんばんは。
今回の更新では本当の意味で波動砲の封印が解かれた、第13話「テレザート上陸作戦・敵ミサイル艦隊を叩け!」について語りたいと思います。

ヤマト史上、これほど後味の悪い波動砲の使用があったでしょうか?
ヤマトの波動砲で敵を殲滅するといえば、オリジナルシリーズにおいては見せ場の一つであり、一発逆転の爽快感あふれるものでした。
しかし、13話における波動砲によるゴーランド艦隊の殲滅は、敵であるゴーランドとノルの擬似親子関係が丁寧に描かれたことや、使用した直後に流した古代の涙、そして美しくも悲しい「藍水晶」のBGMの使用などの要素がにより、これが爽快感のある勝利ではなく、一つの罪が犯された悲劇として描かれました。

これに似た事例といえば、強いて言うならば「ヤマトよ永遠に」での暗黒星団帝国の本拠地「水晶惑星」へ向けた波動砲の使用が該当するかもしれませんが、あれはどちらかというと澪(サーシャ)を犠牲にしてしまったことへの後悔の念というべきであり、波動砲の使用で一つの銀河を完全に滅ぼしたことへの罪の意識という側面は少なかったと思います。
その意味では、波動砲で敵艦隊を殲滅したこと自体を一つの罪として描いたのは初めてのことかもしれません。
このような波動砲の描かれ方は賛否が分かれるかもしれませんが、私自身はこのような描かれ方は好きです。

波動砲は現実に照らし合わせれば核兵器に該当します。
実は私は将来、日本は核武装をすべきと考えており、核兵器否定論者に対しては軽蔑の目で見ています。
なぜなら、本当に全世界から核兵器がなくなるのならば、それは大歓迎です。
しかし現実としては核兵器を有している国は決してそれらを手放そうとはせず、持っていない国々は持っている国々に従属せざるをえないという状況が続いています。
悲しいことですがこのような核を有する国々と対等になるためには力は必要であり、その現実からは眼を背けてはならないと思います(この意味においては、2202の中で描かれた波動砲艦隊計画自体は決して間違った選択ではありません)。

しかし一方で、核兵器は万能の兵器ではなく、使用すること自体が罪である殺戮兵器である事も忘れてはならないと思います。
どうしてもやむをえない理由で核兵器を使用しなければならない場合であっても、使用者は最後の最後まで悩むべきであるし、使用したことに対して後ろめたさを持つべきです。
もし、その一線を持つことが出来ないならば恐らく世界は滅亡します。

第3章から波動砲の使用について悩み続ける古代君の姿に、ファンの間からは批判の声も少なくありませんでした。
確かに軍人として、あるいは指揮官としては優柔不断と取られるかもしれません。
ですが、波動砲という強大な兵器の使用について、それを罪と認識し悩み続ける古代君のあり方は人間として正しいと思います。
むしろこのような人物だからこそ、森雪は彼に惚れ、多くのヤマトクルーも彼についていくことを選択したのではないでしょうか。

またこの観点から言えば、波動砲艦隊計画の危うさは波動砲を搭載した艦隊を編成したこと自体にではなく、波動砲を単なる強大な万能兵器としか認識していない点にこそあると思います。
スターウォーズに登場するダース・ヴェイダーは、デス・スターの建造について軽蔑の目で見ていたという設定があります。
この理由は「テクノロジーを駆使した究極兵器の建造は、それを持つに値しない者たちの政治的野心をいたずらにかりたてるだけ」であったとされています。
2202年時点において国防の観点や外交面で言えば波動砲艦隊計画は間違いなく正しいです。
しかし、将来的にはどうか。
当初の目的を忘れ、波動砲という力に溺れた者たちを例えばガミラスに対する復讐戦争や、覇権国家を目指した侵略戦争に駆り立てることにならないだろうか。
この意味においては古代君の危惧は実はもっともなものです。

「現実を見ろ」とは2202において古代君が他者から言われている台詞です。
しかし最も広い視野で現実を見ているのは実は古代君のほうではないかと思います。
これらの危険性について、論理的な説明で相手を説得出来ないのは彼の若さゆえであるにせよ、藤堂長官や芹沢、山南たちが現在しか見ていない(これが悪いとは思いません)のに対し、古代君は将来を見ています。
主人公らしくないといわれている2202の古代君ですが、この一点だけでも私は古代君は十分に主役にふさわしいイのではないかと思っています。

・・・って、完全に12話の感想ではなく、「波動砲の使用の意味と古代進論」になっていますね(苦笑)
まあ、考えながら書いていますので当初とは違う内容になってしまうのも仕方がないですね・・・(いや、よくない、と自分でつっこみ)
仕切りなおして12話の感想は次回にいたします。