皆様今晩は!
最近あまり考察記事を書いていなかったので、今回は勘を取り戻す意味でのリハビリ的な短い考察です。
今回を含めて2~3本の短い考察を書いてから、本命の「イスカンダル」と「ガミラス」の考察をしようと思っていますのでよろしくお願い致します。
2205の第25話において雪と共にヤマトで「滅びの方舟」に特攻し消滅したと思われていたヤマトですが、最終話である26話において自動で地球への帰還を果たし、古代と雪がテレサ空間で制損じているという事実が判明しました。
ヤマトともに生還した山本によれば、古代と雪は帰還しようとすれば帰還できたのに、自分たちの意思でテレサ空間に残ったとされています。
雪の場合ば、古代がテレサ空間から帰還しようとしなかったから残っただけであると思われますが、それではなぜ古代はテレサ空間に残ったのでしょうか?。
古代が失ったものとは
シナリオ集などによれば、この時の古代がテレサ空間に残ったのは、先のガトランティス戦役で多くのものを失ってしまった結果、心が大きく傷つき、絶望に囚われてしまったから、とされています。
ここで注目すべきはやはり【失ったもの】の中身です。
土方さんや徳川機関長、加藤などの大切な仲間、キーマンという友人、恋人としての雪など、ガトランティス戦役で古代はたくさんのものを失ってしまいました。
しかし、一番大きな喪失は古代自身の「信念」だったのではないでしょうか?
ハッキリ言ってしまえば、2202において古代の信念は冷酷な現実の前に全面敗北しています。
「イスカンダルとの約束」を守りたいという想いは波動砲艦隊構想によって踏みにじられましたが、しかしその波動砲艦隊がなければ白色彗星と戦うことは不可能でした。
確かに波動砲艦隊自体は破れ、地球が白色彗星に制圧されるという事態は招きましたが、しかしヤマトが逆転のきっかけを掴むための時間を稼ぐことは成功しています。
もし波動砲艦隊がなければそれすらできず瞬殺されていたことを考えれば、波動砲艦隊に反対をしていた古代は結果的に間違っていたという事になります。
また、「異星人と分かり合える」という信念も、ミルが目の前で撃ち殺されたことにより打ち砕かれ、ガトランティスとは文字通り最後の1人になるまで殺し合うという結果を招くことになりました。
「時代」で真田さんが「この時、古代は覚悟を決めた」と言っていますが、より正確に言えば、この時の古代は自分自身の信念が現実に敗北したことを認めたのだと思います。
2202の古代は、目の前の問題の解決よりも理想を実現する事に重きを置いていました。
11番惑星で地球にレギオネルカノーネという地球に明確な危機が迫っているにもかかわらず波動砲の使用を躊躇したりするなど様々な問題を起こすことになったのも、この信念を頑固に守ろうとしてきたからです。
しかし「波動砲を使用しなければ地球を守れない」、「ガトランティスとの和解はもはや不可能」といった、古代が大切に守り抜いてきた信念を粉々に打ち砕く現実を前にして、遂に古代はその全てを受け入れたのでしょう。
そして自分の信念よりも地球を守る事を優先したのが最終決戦での古代の在り方だったと思われます。
この結果、古代は地球を守り抜くことに成功しました。
しかし、同時に彼は信念を失い、テレサ空間にたどり着いた彼は古代進という形をした残骸と化していたのではないでしょうか。
26話で描かれた古代について、第7章公開当時、非常に批判が多かった事を覚えています。
しかしもしこれまで自分を支えてきた信念が否定され、失ってしまったとすれば26話の古代があのようになっていたのも納得できます。
人間は「自分のやっていることが正しい」と強い確信を持っている限り、どんな過酷な状況でも耐えることができます。
しかし逆に「果たして自分は正しいのか」と疑問を持ってしまえば、途端に動けなくなってしまいます。
古代がテレサ空間から帰還できなかった理由、それは信念が現実に否定され、何が正しいのか分からなくなってしまったことが一番大きい理由だと思われます。
「古代進は地球を救った」発言の真意
このような自分を見失った人間にとって一番必要なのは他者による肯定です。
恐らく雪はそれを知っていたからこそ、「古代進は地球を救った」と古代にはっきりと伝えたのではないでしょうか。
確かに今回のガトランティス戦役で古代は数多くの失敗や過ちを犯しています。
古代が大切にしている信念も理想論に過ぎないかもしれません
しかし同時に、それでも地球を救ったのは「古代進」であり、「あなたのやってきたことは絶対に間違ってはいない」。
それが雪が古代に伝えたかったことであり、その一言により古代の心は救われたのだと思います。
ちなみになぜ雪が古代が肯定を求めていることを気づくことができたのか。
それは彼女自身が「自分が何者であるのか」という疑問を常に抱いていたからです。
記憶のない彼女にとって、「自分」という存在はいつ消えてもおかしくない常にあやふやなものだったと思われます。
しかし、古代はそんな彼女を恋人として受け入れ、その存在を肯定してくれました。
それは雪にとっては間違いなく心の安定をもたらしており、同時に雪に他者からの「肯定」の重要性を理解させていたのだと思われます。
古代が雪の手を拒んだ理由
雪の言葉に自分を取り戻した古代ですが、差し出された雪の手を取る事を躊躇います。
これは何故でしょうか?
思うにそれは雪を巻き込むことを恐れてしまったからではないかと思われます。
雪の言葉により、古代が改めて自分の信念を取り戻し、辛い現実を受け入れながらもそれでも自分の信念を守っていくことを心に決めたことは、周囲の心情風景が絶望の赤から金色に変化していたことから間違いありません。
しかし、テレサ空間で様々な未来を見てきたことにより、自分が進もうとしている道が決して報われることがない茨の道であることは古代は知っていました。
自分一人がその道を進むことについては古代はもはや迷う気持ちはなかったはずです
ですが、最愛の女性である雪をそんな苦労しかない人生に付き合わせて良いのか。
そこまでしてくれる雪に果たして自分は報いることができるのか。
雪にしてみれば「何をいまさら」を言いたくなるようなことかもしれませんが、雪を心から愛しているからこそ古代は雪の手を取る事を最後になって躊躇ってしまったのだと思います。
そんな古代を留まらせたのは小さな子供の手でした。
福井氏によればこの手の持ち主はあくまで複数ある未来の1つという事ですが、失われるものばかりかもしれないイバラの道でも、古代と雪が二人で一緒に歩むならば、得られるものもあるという事を象徴した存在だったのだと思います。
だからこそ、この手を見た古代は雪の手を取ることができたのでしょう。
続編である2205の古代は精神面で非常に大きな成長を遂げています。
テレサ空間の記憶はろくに残っていないという事ですが(本人たちにとってはテレサ空間での出来事は夢のようなものであり、部分的にしか思い出せないという感じなのでしょう)、このテレサ空間で大いに悩み、苦しんだ果てに、本当に大切なものを再確認できたからこそ、2205での成長した古代艦長があるのだと思われます。
当時は批判の多かった2202の最終話の古代ですが、古代の心の変化に注目してみればなかなかよくできたストーリーだったのではないでしょうか。
コメント
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こんにちは。
2202は福井氏も「古代の鬱ヌケの物語」といっていたように、2199で描けていなかった古代の精神的成長を掘り下げる話だったのだと思います。結果的につねに古代が悶々と悩む哲学的な話が続き、スカッとする話があまりなかったのも2202の評価が下がった一因でもあるでしょう(要因は他にもいろいろあるでしょうが)。
ただ、2205はあくまで2202のイベントの延長線上の話であり、2205の高評価によって、改めて2202が見直される可能性もあります。とかく文芸的作品というのは、多くの人から分析されることによって評価され出す例もありますからね。
「こっちは経験者だぞ」も2202のイベントを知らないとニヤリとできないわけで。
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こんにちは。
私は2202は好きです。ただ、高次元にいる古代君が一度は雪の手を拒んだのが何故なのか、いまいちよく分かりませんでした。
ですので、この記事を読んで、そうだったのかととても納得できました。
2202であれだけ悩み葛藤し苦悩したからこそ、2205の古代君があるわけで、流石は福井さんなのかなとも思います。
古代君にはこうありたいという理想があって、それが時として呪縛にもなります。でも、理想がなければ、進歩もないようにも思うので、そのあたり、2205ではどのように見せてくれるのか、後章が楽しみです。
2205はかなりの高評価で、ヤマトファンとしてはとても嬉しいです。
それにしても、このように深く分析できるのが素晴らしいですね。繰り返し読ませていただきました。
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愛希穂様、今晩は。コメントをありがとうございます。
過分なお褒めのお言葉、誠にありがとうございます!
あくまで私の勝手な解釈であり、もしかしたら福井氏の意図は異なるのかもしれません。
ただ「このような解釈もできる」と少しでも参考にしていただければ幸いです。
>古代君にはこうありたいという理想があって、それが時として呪縛にもなります。でも、理想がなければ、進歩もないようにも思う
これは全く同感です。
そして古代進はどんなに現実に叩きのめされようとも、自分の理想を決して捨てない男だからこそ、雪をはじめ多くの人間が彼について行くのだと思っています。
思いつくままに好き勝手に書いている「ヤマトな日々」ですが、今後とも楽しんで頂ければ幸いです。
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2202は人間の心に触れていることが分かりますね。
2202を今更ながら改めて観ています。ストーリーの突拍子感はありますが、それはそれとして全体は良かったと感じています。
自分の思いと現実のギャップの理不尽さはまさにリアルで痛感しています。(苦笑)
特に7章の終わらせ方は良かったと思っています。古代が雪を大切にしているのは2202冒頭から一貫していますので、現実を受け入れなければならない理解はできても雪を巻き込みたくないと思いというのも納得です。二人の間の小さい手は、二人で共に生きていくことを(テレサが言うところの)「選択した結果」ですよね。ヤマトとクルーが迎えに来たときの表情が全てを物語ってると思います。
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kazu様、コメントをありがとうございます。
こうしてみると、2202はストーリー的には、(好みは分かれるかもしれませんが)よくできていたよく考えられていたと思います。ただ作中では情報不足や描写不足で1回見ただけでは分かりづらいというのが間違いなく問題でした。
2202は制作のコンセプトとして人間描写ではなくメカニック描写に力を入れたと言われていますが、結果論から言えば人間描写に力を入れるべきだしたね。
その意味で「ヤマトという時代」はその辺の不足をかなりフォローができた名総集編だと思います。
あの作品で2202の評価が変わり、2205の成功につながったのは本当によかったです。
皆川先生、本当にグッジョブです!
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こんにちは
皆さんの考察は凄いですね。気にしていませんでしたが、なるほど2202は文芸作品と言われると納得できるところがありました。
思うところは人それぞれ違うのは当たり前なのですが、私は2205前編を見た段階では2202の評価はまだ低いままです。どうやら私は宇宙戦艦ヤマトに文芸哲学的なものを求めていなかったということが自分で見えてきました。2205のテンポや描写表現の方が好みで判り易く、自分にとってのヤマトはこんな感じという感想です。
2202における高次元宇宙ですが、とにかく謎というか明確な設定を(あえて)していない感が強く、後に何でも対応できるようにしていると感じています。
そもそも山本はいつどうやって高次元に行ったのか、なぜ山本は2人を置いて帰ってきたのか、高次元からの帰還にエネルギーはいらないのにヤマトで迎えにいく必要があったのか、何か乗り物でなければ戻ってこれないのか、(あの)真田さんは高次元に行ったのに何も検証せずに帰還したのか、山本も一緒に迎えに行ったのに帰ってきたらコスモタイガーで出迎えって?、(2205に絡んでしまうが)未来は語られていたが過去にはアクセスできるのか等、謎だらけです。
謎は謎としておいていても良いのですが、制作側にはその辺の設定はしっかり持っていただき、後になって矛盾がでないようにして頂きたいと思っています。この辺りの矛盾が2205後編あたりで出てきてしまうと前編の高評価を覆しかねない心配をしています。
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TORA様、コメントをありがとうございます。
2202は検証すればかなり深みのある面白い作品なのですが、正直な話、娯楽作品としては魅力に欠けていますので好き嫌いが思いっきり分かれてしまうのは仕方がないと思います。
また、2202の良さがわかるには繰り返し見る必要があるのですが、大半の方はキャラ描写の薄さや設定のずさんさ、面白みの書ける戦闘描写に1度でウンザリしてしまいますので、これも2202の評価が低い原因だと思います。
私自身は2202は好きであるが、知り合いに勧め辛いんですよね(苦笑)
ちなみに山本に関してはキーマンが滅びの方舟で自爆した際に、その余波でコスモタイガーⅠが吹き飛んでおり(この展開は酷いと思います)、描かれてはいませんが、その際の膨大なエネルギーに乗ってテレサ空間に迷い込んでしまったと解釈しています。
元々あの周辺はテレサ降臨の準備が整いつつあるという事で、次元がおかしくなっていたので、ちょっとしたことでテレサ空間に繋がりやすくなっていたのかもしれませんね。
2205に関してはシナリオ会議開催され、皆川先生をはじめ、根っからのヤマトファンのスタッフが何人も参加しているようなので、そこまで心配していません。
失敗があるとすれば後章で本当に完結するのかなという事ですね(笑)
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こんにちは
ご返信ありがとうございます。
テレサ空間は<あの世とこの世の狭間>らしいとのことや最終話の高次元表現から精神世界の様で、高次元世界では(声は聞こえてるし)生き死には関係ないのかな?山本は死んでいたのかな?それなら加藤とかも生き返るのかな?等と想像したりしました。
でも山本は「二人は生きています」と言っていたので、高次元から帰還できるのは生きていることが条件なのでしょう。そうなると乗機爆散後、山本も生きているうちに高次元世界に行ったことになりますから、山城さんのご指摘通り滅びの箱舟が土星軌道に行く前から高次元への道が開かれていたのでしょう。ズォーダーと白サーベラーの死亡確認はされていないので、実は高次元空間に飛ばされていて宜しくやっていたら。。。。おいおい!
2202では2199での設定や伏線を無視しまくって破綻しているという認識です。そもそも2199時点で出渕監督に続編制作意思がなく、その様な終わらせ方をしているので旧さらば路線の続編を作ることは難しいと思います。でも「続編」としての制作なのですから、そこは第一に考えてほしかったですね。この辺の設定無視は「旧新たなる」から「旧永遠に」の流れの時に「本当に続編なのか?同じ敵なのか?」と疑問になった以上の振り切れっぷりに感じています。まぁ他にも鬱々な古代とか副監督のご乱心とか評価を下げている理由はあるんですが。
2202で語られなかった謎はそれこそテンコ盛りにあります。続編を作らず2202で終わらせるなら謎のままで良いこともありますよね。でも続編ができました。2205は面白く、そこまで心配はいらないのかもしれません。ですが2202のストーリー、世界感が根底にありますので、今後2205の話が進む上でこの記事の「何故古代はテレサ空間に残ったのか」等をはじめとした明かされていない謎については紐解きが多少なりともあると、私の中の2202が再評価されるのかなと思っています。
※こういう内容について「福井さんのトークでありました」等がありますが、作品内でしっかり表現しなければダメだと思っています。
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TORA様、コメントをありがとうございます。
また返信が遅くなってしまい大変失礼いたしました。
ズォーダーと白サーベラーはテレサ空間の迷い人になっている可能性は確かにありますよね。
まあ今後の物語に関わってくる事は無いと思いますが。
個人的にアニメは作品を見て内容を理解できないと駄目だと思うんですよね。
制作者がイベントや書籍で明らかにする設定や補足はあくまでも「知っていればより楽しめる」というレベルであるべきであり、知らなくても特に問題はない所まで本編内ではっきりさせるべきだと思います。
その意味では2202はやはり描写不足だったと思いますね。
「ヤマトという時代」である程度フォローされているとはいえ、それだけは本当に残念です。