皆様今晩は。
今回は以前より度々耳にしている「何故、芹沢が失脚せずに重職についているのか」という疑問について真面目に検証してみたいと思います。
まず結論から言ってしまえば、芹沢は「軍官僚として優秀」であることと、「彼個人に責任を追及される事情が無い」ということが彼が失脚せずに地球防衛軍の中でNO,2である統括副司令官 の地位についている理由であると考えられます。
優秀な軍官僚である芹沢
そもそも軍には実戦部隊を指揮・統括する軍人である「制服組」と、事務仕事や予算の獲得など組織運営に必要不可欠な後方勤務全般を担う官僚である「背広組」がおり、これをヤマトに当てはめるならば、沖田や土方は「制服組」であり、芹沢は「背広組」です。
そしてタカ派的な発言が多いため誤解されがちですが、2202本編で描かれている芹沢を見る限り、彼は軍官僚としてはきわめて優秀です。
その理由を挙げるならば
①短期間で壊滅していた国連宇宙軍を地球防衛艦隊として再編する事に成功した。
②2199時においては対ガミラス最強硬派であったにもかかわらず、ガミラスとの友好条約に反対せず、むしろ地球の復権のためには積極的に推し進める柔軟性を持っている。
③防衛大綱である「波動砲艦隊構想」推進のために、政治家や経済界の協力をしっかり取り付け、必要な資源と予算を確保している。
④「波動砲艦隊構想」にとって一番障害になるイスカンダルとの協定を政府の面子を潰さず(←重要!)有耶無耶にする抜け道を見つけ出している。
ということがあります。
はっきり言って地球防衛軍の再編という緊急課題を抱えていた地球政府からみれば、綺麗ごとを並べて政府に歯向かってくる戦争屋の土方よりも、政府の方針に従いその豪腕でしっかりと仕事をしている軍官僚の芹沢のほうが高く評価されるのは当然です。
また、彼は一人の人間としてみても決して劣悪な人物ではありません。
確かに彼には政治的野心があるとの設定がありますが、2199における「先制攻撃の判断」や「イズモ計画の強行」はあくまでも地球存続を想ってのことであり、そのスタンスは2202にでも引き継がれています。
さらに2202の小説版においては退役し民間での惑星間運行会社を創設した元部下に対して色々便宜を図ってやるなど面倒見の良いところがあるとことも語られており(悪く言えば職権を利用しての天下り先の確保という事にもなりますが・・・)、それなりの人望があったようです。
おそらく土方は前線の将兵には圧倒的な人望があったと思われますが、後方勤務の将兵や政治家・財界に対してはそれほどでもなく、そのことが失脚・閑職への左遷に繋がったのではないでしょうか。
なお防衛軍司令長官の藤堂が、人物や思想的には相容れぬ芹沢を2199時代からその片腕として用いているのは、やはり芹沢の能力が地球にとっては必要であるということと、方向は違えども芹沢の「地球を守りたい」という想いは認めていたからだと思われます。
問題なのは、2199の頃は戦時下という事で沖田や土方という名将たちの発言力が大きく、彼らと協力する事で芹沢の行きすぎを抑えることができましたが、沖田は病死し、戦争が終わった事で発言力が低下した土方も失脚してしまった事で、芹沢の暴走を抑えることができなくなったことではないかと思われます。
芹沢の責任は追及できるか?
2199において芹沢は二つの大きな問題を引き起こしています。
1つは、慎重派の沖田を更迭し、巡洋艦ムラサメにガミラス艦隊への攻撃を命じたことでガミラスとの戦争の口火を切ってしまった事。もう1つは、ヤマトクルーにイズモ計画推進派を紛れ込ませて叛乱を起こさせた事です。
まず最初の「ガミラスとの戦争の口火を切った事」ですが、これは芹沢一人の責任とは言い切れません。
そもそもガミラス艦隊が太陽系内部へと侵入を果たし一切の交信にも応じないという時点で地球の主権を侵しておりますし、後に判明したガミラスの目的を考えるならば開戦は時間の問題でした。
確かに敵艦隊の実力を軽視していたというきらいはありますが、あの時点での先制攻撃はあながち間違った判断ではありません。
さらに言えば、攻撃の判断をしたのは芹沢ではなく、さらに上の国連宇宙軍の司令部であり彼はそれを前線の艦隊に伝えただけです(芹沢本人も攻撃の判断に対して積極的に賛成だったのは間違いないでしょうが)。
むしろ彼の立場からすれば、上層部の判断に逆らう提督を解任した事は当然であり、むしろ抗命罪で沖田を軍法会議にかけなかっただけ比較的穏健に済ませたともいえます。
その後の大敗でそれどころではなかったという事だけかもしれませんが・・・
次にヤマトにおける叛乱の件ですが、これも言い逃れの余地は非常にあります。
まず万が一ヤマト計画が遂行不可能になった場合の保険として、即座に次の手であるイズモ計画に移行できるようにしておく事は決して間違った事ではありません。
さらにそのヤマト計画からイズモ計画への移行に関しては、彼自身は具体的に何も言ってはおらず、あくま伊東や新見といった実行グループの判断に委ねられていました。
もしヤマトが地球に帰還したあと、叛乱の黒幕として責任を追及された場合でも「自分は遂行不可能になったらイズモ計画に切り替えろと言っただけだ。叛乱は伊東の完全な暴走だ」と、言い逃れる事ができます。
主犯である伊東が死亡している事もあってその反論を覆す事はほぼできないでしょう。
また沖田やヤマトクルーの立場からしても、この叛乱は「無かった事」にしていると思われます。
何故ならこの叛乱が表ざたになった場合、新見を始めとした叛乱参加者は反逆罪で軍法会議にかけなければなりません。
この場合、最悪、極刑が科されることもあります。
ヤマトクルーにとってもそれは望むことではないと思われます。
幸い、この叛乱では特に被害らしい被害は生じておらず、イスカンダルへの航海も成功した事から、この叛乱事件に関する記録はすべて削除され、伊東たちも普通の「戦死」扱いになっているのではないでしょうか。
そのため、この叛乱事件の黒幕である芹沢もまた責任追及の動きは無かったと思われます。
以上のことから考えて、2202において芹沢が失脚せず、重職についているのは当然であると考えられます。
それにしても最終章における芹沢は間違いなく注目したい人物の一人です。
第六章において、戦況の悪化が進むにつれ、だんだんと言動がおかしくなってくるなど精神の破綻がみられます。
23話ではいよいよアポカリクス級航宙母艦を中心とする起動艦隊が地球に到着してしまうようですが、この時彼はどのような判断と行動を起こすのか気になるところです。
以前も書きましたが、恐らく致命的なやらかしで最終決戦の引き金を引いてしまうのではないかと思いますが、さてさて・・・
コメント
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最初、カラクルム級が地球に突入してきて、もう間に合わんとなったら腰抜かして諦めてましたし、その後は、助かったと思ったらヤマトを押さえにかかる。現金というかちゃっかり者のあたりは背広組の鏡でしたね。このあたりの身替りの早さは出世の秘訣ですね。(笑)
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上映中、芹沢のセリフを聞く度に暗黒星団帝国がチラつきます。彼は聖総統になるんですかねぇ?改めて「永遠に」を見返すとトランプにしかみえませんでしたが。
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製作サイド?には、悪者にしない意図があるとか、ないとか(謎)
軍務局長が、沖田を解任したり、先制攻撃を指示するのは、軍の指揮命令系統上おかしいらしいのですが、そう言ったことに疎い一般の視聴者視点からは、山城2199さんの分析には納得感があると思いました。
彼も地球カンパニーの一員で、重役として、社運をかけた社の方針に従い、それに異を唱えた他の重役を排除し、与えられたミッションを確実にこなすために努力していただけに見えます。
その結果が思わしくなかった時、都合のいい説明を社員にするのも、よくある話では?
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kazu様、コメントありがとうございます
> 最初、カラクルム級が地球に突入してきて、もう間に合わんとなったら腰抜かして諦めてましたし、その後は、助かったと思ったらヤマトを押さえにかかる。
カラクルム級が地球に突入の時はちょっと小者感が漂っていましたね(苦笑)
何時も強気の芹沢ですが、官僚らしく「想定外」の事には弱いのかもしれません。
現金というかちゃっかり者のあたりは背広組の鏡でしたね。このあたりの身替りの早さは出世の秘訣ですね。(笑)
ガミラスとの同盟重視といい、良い方に回ればこれもあながち短所ではないのですがね。
芹沢のようなキャラは物語上やはり必要なので何やかんやといって長生きして欲しいです。
現実では身近にいては欲しくない人ですけど(笑)
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薫は士郎の嫁(希望) さま、コメントをありがとうございます
> 上映中、芹沢のセリフを聞く度に暗黒星団帝国がチラつきます。彼は聖総統になるんですかねぇ?改めて「永遠に」を見返すとトランプにしかみえませんでしたが。
暗黒星団帝国のイメージが重なるのは同感ですが、芹沢はそこまで大物でも悪党でもありませんから(←ある意味芹沢にとっては酷な評価かな?)、聖総統にはならないと思います。
せいぜい、地球が暗黒星団帝国になってしまう道筋を作ってしまった、という程度で終わるのではないでしょうか?
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鮫乗り様、コメントをありがとうございます。
> 製作サイド?には、悪者にしない意図があるとか、ないとか(謎)
「正義は一つではない」ので、単純な悪党にしたくないという意図は確かにあるのかもしれません。
最も彼の場合は「良かれと思ってやったこと」がすべて裏目に出ているわけですから、より質が悪いといえますが。
> 軍務局長が、沖田を解任したり、先制攻撃を指示するのは、軍の指揮命令系統上おかしいらしいのですが、そう言ったことに疎い一般の視聴者視点からは、山城2199さんの分析には納得感があると思いました。
今の制度に当てはめればご指摘の通り確かにおかしいです。
芹沢はいわば事務次官ですので実戦部隊に対する指揮権などは存在しません。
ただ2199の世界ではどのような組織や権限になっているのかわかりませんので、その辺は深く考えなくてもいいのではないかと思われます。
> その結果が思わしくなかった時、都合のいい説明を社員にするのも、よくある話では?
実によくある話です(笑)
というよりも本当に芹沢ってやっている事それ自体は決して間違ってはいないのですが、全部裏目に出ているんですよね・・・
ある意味で気の毒な方です。
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芹沢に関しても、色々と妄想出来て楽しいです。
『来るなら来い!』と呟く彼の手に握られたタブレット。
そこに映っていたのは、妻子の顔か、非情な計画か?
それによって、『徹底交戦だ!』に続く彼のセリフも趣がかわりますね。
『…地球のために。明日を生きる子供達のために!』
→野心家なんて言われてるけど、案外根はいいやつ?
『…いかなる手段を取ろうと。どんな姿になろうと!』
→高性能な義手、義足でサイボーグ化。黒い戦艦と戦闘機を沢山作って
確かに暗黒○×にイメージ重なります
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鮫乗り様コメントをありがとうございます
> 『来るなら来い!』と呟く彼の手に握られたタブレット。
> そこに映っていたのは、妻子の顔か、非情な計画か?
個人的にはあのタブレットは現在用意ができている艦艇の総数などの報告が表示されているのだと思っていました。
土星宙域に足止めした結果、かなりの数の艦艇が用意できた事を確認できたので、強気に総力戦の命令を下したのだと思います。
とはいえ、「足止めしてくれれば」の台詞が出てきますので、本人もかなりヤバイ状況とは感じていたのかもしれません。
> 『…いかなる手段を取ろうと。どんな姿になろうと!』
> →高性能な義手、義足でサイボーグ化。黒い戦艦と戦闘機を沢山作って
> 確かに暗黒○×にイメージ重なります
もし噂の次回作が本当に製作されるならこの辺が伏線になるかもしれませんね。
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最近のガンダムにおけるゴップを私は連想しましたね。彼も軍政家として最近は再評価されていますし、モチーフだったりするのかも。
芹沢(と上層部)がガミラス来寇で先制攻撃を命じたのはあちらの基本方針「服従か絶滅か」を事前に知っていたのでは?と推察しています。
その前段にあった火星の独立戦争。実はここにガミラスの工作が介在していたとしたら?そしてその工作員(多分ザルツ人)が捕らえられ、その際に色々あってガミラスの野望が判明していたら?芹沢たちは一縷の望みで先制攻撃を命じていた事になります。
ムラサメ型巡洋艦の建造経緯も火星との戦争を口実に実は異星人(ガミラス)との戦役に備えたものだった、というのが勘ぐれますし。
実のところ前作である2199の裏設定ってまだまだ色々明かされていない点も少なからずありそうなんですよね。
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妄想御免様、コメントをありがとうございます。
> 最近のガンダムにおけるゴップを私は連想しましたね。彼も軍政家として最近は再評価されていますし、モチーフだったりするのかも。
ゴップ大将は漫画「ジョニー・ライデンの帰還」で本当にイメージが変わりましたね。
やはり相応の地位についている人物はそれなりの理由と能力があるということなのでしょう。
劇中では仇役として描かれている芹沢ですが、純粋な悪党として描かれていないのは見方によって人の評価も変わるということを描きたかったのかもしれません。
ところで、自分としてはゴップ大将と重なるのはむしろ藤堂長官ですね。
劇中では具体的に何かをやっているシーンは無いのにちゃっかり良いポジションにいるんですよ、あの人。
まさにゴップ!
> 実のところ前作である2199の裏設定ってまだまだ色々明かされていない点も少なからずありそうなんですよね。
同感です。
こういったことを本編の描写からあれこれ想像していく事もヤマトの楽しみ方の一つであると思っています。