艦長と提督

皆様今晩は。
先週は色々あり過ぎて気分はいまだにブルーです。
ここは一つ、起爆剤になるようなニュースが欲しいところ。
ヤマトの次回作も第一報以来、全然音沙汰がありませんし、そろそろティザーサイトくらい欲しいですね~

というわけで今回も軽めの考察です。
本当に色々やりたいことが多いのですが上手く作業が進まないという感じですね。
困ったものです・・・(苦笑)

さてここから本編です。
2199と2202の設定の変更の一つに、「艦長」と「提督(艦隊司令)」の区別があります。

2199では艦隊全般を指揮する「艦隊司令官」と艦の運用に責任を持つ「艦長」はそれぞれ存在していました。
例えば国連宇宙軍第一艦隊司令長官は「沖田 十三」であり、同艦隊旗艦「キリシマ」の艦長は「山南修」です。
一方、2202においては地球艦隊司令長官に着任した「山南修」が「アンドメダ」の艦長を兼任しており、「艦隊司令官」と「艦長」の区別が無くなっています。
しかし、純粋な艦隊運用の観点で考えた場合、この兼任制度は明らかにマイナスです。

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リスクの多い兼任制度

「艦隊司令官」と『艦長」の職務を区分する理由は2つあります。
1つは「艦隊司令官」と「艦長」では階級がつりあっていないということです。
近代海軍が誕生して以来、巡洋艦以上の艦長は「大佐」が着任するのが通例となっています(駆逐艦クラスは少佐~中佐)。
一方、艦隊司令官は「少将」~「中将」の将官クラスが着任することになっています。
これは一艦の指揮権限しか持たない艦長に対し、これらの艦長たちを束ね、艦隊全体の指揮を取らねばならない艦隊司令官のほうが階級が高くなければならないのは当然です。

ちなみに「ヤマト」の艦長は宙将(現在の階級に当てはめれば大将クラス)である沖田が勤めており、階級的におかしいのですが、これはヤマトの航海が地球の命運を左右する重要なものであったこと、さらに指揮すべき艦隊がすでに存在していなかったことから例外的な着任であったと思われます。

旗艦の艦長のみ将官がなればよいのではないかという意見もあるかもしれませんが、これは「艦隊司令官」と『艦長」の職務を区分する理由は2つ目の理由でありえない人事です。
というのも、もし艦隊司令官と旗艦の艦長が兼任していた場合、旗艦が被弾した時点でその艦隊は指揮不能になってしまうからです。

もし艦長職と司令官職が分けれ荒れていた場合、旗艦が被弾してもダメージコントロールの指揮を取るのは「艦長」であり、司令長官は引き続き艦隊の指揮を取り続けることができます。
しかしもし兼任であった場合は、司令長官である艦長がダメージコントロールの指示を行っている間、艦隊の指揮は完全放置ということになります。
一分一秒の判断の遅れで勝敗が決まってしまう戦場で、これがどれだけ危ないことなのか改めて説明する事はないでしょう。
なぜ国連宇宙軍時代はきちんとできていた区分を、再編した地球防衛艦隊では改悪してしまったのでしょうか?

理由1:人材不足

その理由でまず考えられるものは、純粋な人材の枯渇です。
先のガミラス戦役で経験豊富な将兵を多数失った上、人口そのものが激減してしまった地球では、艦隊司令官と艦長を個別に着任させるほどの余裕がなくなってしまったのではないでしょうか。
また、艦の無人化が進んだことで、各艦に配置されているクルーの数も非常に少なくなったことから艦長そのものの職務も減り、艦隊司令官の職務と兼任できる余裕ができたのではないかと思います。

理由2:波動砲艦隊の基本戦術と戦術AIの導入

また波動砲艦隊登場により、艦隊司令官という職務そのものの存在価値が薄れた可能性もあります。
ぶっちゃけていってしまえば、波動砲艦隊の戦術は「相手の前に整列して波動砲をぶっ放す」という単純極まりないものであり、せいぜい必要となる判断は波動砲の発射のタイミングだけです。
このような任務であるならば、艦長のほかにわざわざ艦隊司令官を用意する必要はありません。

また波動砲艦隊は基本的に旗艦以外は無人艦であるため、階級の序列を気にする必要はありません。
旗艦の艦長を艦隊司令官とに任じても特に問題となる要素が無かったとおもいます

さらに2202の「波動砲艦隊」は最終的にはAI運用の無人艦隊を目指していた節があります。
実際、土星海戦の段階で、作戦の立案及び艦隊の指揮は戦術AIが行っている描写が入れられており、この点でも艦隊司令官の損存在価値はなくなっていたと思われます。

ガミラス戦役時においては「戦艦キリシマ」の艦長でしかなかった山南がいきなり「地球艦隊司令長官」に任じられたのは大抜擢という感じが強かったですが、このようにして考えてみると、彼に要求されたのは地球艦隊総旗艦アンドロメダの艦長としての能力であり、「地球艦隊司令長官」はアンドロメダ艦長になったことによりオマケ的についてきた肩書きなのかもしれません。

小説版で「地球艦隊司令長官」に任じられたとき山南は「なんで俺が」と疑問に思ったという描写がありましたが、逆に言ってしまえば、地球艦隊司令長官の任務は一艦の艦長クラスですら勤まるレベルのものになってしまったということだったのかもしれませんね。

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コメント

  1. kazu より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    件の事件はとても悲惨で言葉もありません。

    さて、今回の記事、個人的には、ヤマトの世界における軍組織の設定がなさ過ぎることに発生するもので正解ではなく最適解にせざるを得ないと思われます。

    本来、大統領の命令は、司令長官を通じ、軍司令官に伝達されて作戦が実行される。
    ヤマトシリーズでは、Ⅲのガルマンガミラスが最もそれらしく設定されていたのではないでしょうか。もう少し幅広く言えばガミラスが組織的には体をなしている、と思います。

    そこで地球なんですが、少し変なんですよね。
    2202では、斎藤隊長率いる空間奇兵隊のヤマト乗艦に当たっては、おそらく司令長官の命令若しくは決定によるものだった。とするなら、元々空間騎兵隊は、どの軍の所属であり、どこから命令が下っていたのか、未知の世界ですが少なくともアンドロメダを旗艦とする艦隊のものではなさそうです。米軍海兵隊のようなイメージを彷彿させてはくれますが。陸軍ではなさそうですが。

    他方、仮に、アンドロメダ率いる艦隊が一まとまりの方面艦隊のようなものであるなら、司令長官ね命令伝達先として統合司令官がいるはず、ということになります。他の軍隊に所属した空間騎兵隊を吸収しているんですから。
    この統合司令官は、統合軍又は宇宙艦隊、を実際に指揮運用することになるとすると、最初から第一線で砲雷激戦をするなどということは考えにくいんですよね。
    しかし、艦隊を運用する宇宙空間戦争なので、地球からの通信が困難なエリアへの展開も想定して、ましてや、2202の世界では火星や月基地も司令部を置くにはあてにならず、艦隊旗艦に置いたと考えるしかないと思います。しかしながら、地球には単一の宇宙艦隊しかなかったのかという疑問はついて回ります。
    それはさておき、山城2199さまご指摘のように、自艦の操作と艦隊運営の指揮を同時に行うのは不自然です。
    しかし2202では、第1章からアンドロメダが拡散波動砲を放った勢いをかって自ら掃討作戦に打って出ていますが、それはドレッドノート級以下の艦に任せる行動で、波動砲射撃ですら配下の艦に行わせて、後方から指揮すべきシチュエーションでした。特に前線に展開していた艦がいたわけですから。同様に、土星沖会戦でも、尾崎艦長のヘルプコールで出陣していますが、本来ならあそこは攻め込んでくる白色彗星帝国をどう迎え撃つかの作戦の一環で、駆逐艦などを使って少ない艦でどう戦うのかの指揮が下りていたはずなんですが。

    すみません、この組織的運用面については消化不良もいいとこなので色々書いてしまい、長文失礼しました。
    ここでは土方さんと山南さんの階級や組織内での上下には触れません。敢えて。笑
    少し丁寧に設定がなされ、そのベースの上に立った展開だと、もうちょっと違う戦闘シーンがあったのかもしれません。

  2. yoshirinn より:

    SECRET: 0
    PASS: 95545c8e847dd5e24084bf2f9d8331cf
    山城さん、こんにちは。本当に嫌な事件です。まだはっきりとしかことはわかりませんが、報道が事実だとすれば、どのアニメ制作会社でも起こりうる事件なので、背筋が寒くなります。

    恐らく2199ファンにとって「2202」に最初に感じた違和感が、この「組織のリアリティ不足」ではないかと思います。その意味では決して「軽めの考察」ではないと思いますが(笑)、気にする人にとってはとことん気になるものなんですよね。
    アンドロメダは地球艦隊の総旗艦なのに、艦隊司令部としての機能を持っているように見えず、むしろドレッドノート型の艦橋のほうが、それらしい席があります。艦長席の両隣りに、参謀の席でもあればよかったのに。
    山南さんの階級ですが、アメリカでは低い階級から抜擢されることは、よくありました。ただ、これをやれるのは総司令官の大統領だけのはずです。真珠湾攻撃時の、太平洋艦隊司令長官のキンメル大将がそうだったと記憶しています。劇中で、そうしたシーンがあればリアリティが増したことでしょうに。

  3. 匿名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    古代「じゃあ人間は何をするんですか?」
    真田「座って、ただ計器を眺めているだけさ」
    もはや戦艦ではなく、戦闘マシーンという台詞。

    まさに2202の地球艦隊はこんな感じなんでしょうね…。

  4. 山城2199 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    kazu様、コメントをありがとうございます

    > さて、今回の記事、個人的には、ヤマトの世界における軍組織の設定がなさ過ぎることに発生するもので正解ではなく最適解にせざるを得ないと思われます。

    2199ではわりかし組織構成がきちんとしていたのですが、2202は本当にザルなんですよね・・・
    このあたりはちょっと残念でした。
    あと色々なご意見ありがとうございます!
    特に空間騎兵の組織図や各艦隊の役割などはかなり面白そうなので別の機会に考察してみたいと考えております!
    よろしくお願いいたします。

  5. 山城2199 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    yoshirinn様、今晩は!
    コメントをありがとうございます!!

    > 恐らく2199ファンにとって「2202」に最初に感じた違和感が、この「組織のリアリティ不足」ではないかと思います。その意味では決して「軽めの考察」ではないと思いますが(笑)、気にする人にとってはとことん気になるものなんですよね。

    まったく同感です!
    特に2199ではこのあたりの設定がしっかりしていただけに2202ではいっそう違和感が沸いてしまうんですよね。
    オリジナル版のように最初からだったのならば、そういう世界観だと割り切れたのですが・・・

    > 山南さんの階級ですが、アメリカでは低い階級から抜擢されることは、よくありました。ただ、これをやれるのは総司令官の大統領だけのはずです。真珠湾攻撃時の、太平洋艦隊司令長官のキンメル大将がそうだったと記憶しています。劇中で、そうしたシーンがあればリアリティが増したことでしょうに。

    太平洋艦隊司令長官の逸話はキンメル提督ではなく、後任のミニッツ提督だったと思います
    キンメルが真珠湾攻撃の責任を取らされて更迭されたあと、序列28番目の少将であったミニッツが中将を飛ばして大将になって太平洋艦隊司令長官に就任しました。
    もっとも彼は開戦前から太平洋艦隊司令長官候補として度々名前が上がっていたそうなので遅かれ早かれ就任したのは間違いなかったとは思います。
    とはいえ、このあたりの合理主義は流石だと私も思います。

  6. 山城2199 より:

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    コメントありがとうございます!
    いや、2202の世界はもっと酷いと思います(汗)

    > 古代「じゃあ人間は何をするんですか?」
    > 真田「何もしない、後方の安全地帯でポップコーンを片手に無人艦が戦っているのを観戦するだけさ」

    というような感じになるのではいかと・・・
    実際、AIによる無人艦構想がかなり進んでいましたし、あのまま時間断層が存在し続ければ恐らくこのような世界になったと思います。

  7. kazu より:

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    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    空間騎兵の組織図や各艦隊の役割などはかなり面白そうなので別の機会に考察してみたい

    ご負担にならなければ、よろしくお願いします。

  8. パステヤージュ より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    こんばんは。
    触れてはいけない話題に触れてしまいましたねw
    わたしはストーリーの外から毒を噴いてみます。
    そうなんですよねぇ。設定がかなりユルいので違和感が残ってしまう状態ですよね。
    見る側はヤマトの世界はウソの世界というのをちゃんと知った上で、見ている間は上手にダマされることを期待しちゃいますもんね。これはヤマトに限らずあらゆるアニメに通じてしまう。
    劇中の設定で他の皆さんがいかに善意に解釈してくれていても、空いている穴がデカ過ぎて塞がらない状態です。

    製作サイドの知識<ファン知識
    この状態で製作サイド上層部は為すべき仕事を放棄し、部下の仕事に割り込み、あまつさえチェックをおろそかにした。自衛隊広報なり軍事アナリストなりに少しでも足を運べば、もう少しナントカなった様に思います。
    そして今回、コレがファンサイドに向けて発信する事態だ。判っているのかねぇ。。。
    もうね、頭を抱える案件だよ。

    SFモノは荒唐無稽だが背景になる部分はしっかりしているものだ。馬鹿にはできない。
    波動砲一つとっても、エネルギー120%充填?どうやってそんなに入れるの?圧力かけてもOK?何、気体なの?120%入れたら液化とかするのか?発射口から液化した波動エネルギーがでろ~んと出たりしないか?充填中にピンホールができたら殺虫剤みたいにぶしゅ~~~っとタキオン粒子が噴出すのか?謎は深まるばかりだ。
    やはり我々には[打消]愛[/打消]エレガントなウソが必要だ。

  9. kazu より:

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    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    ヤマトの組織と階級に関しては、古代進がなぜ艦長になれたのかな?と。
    通常なら行政組織規則に沿って、一戦闘艦の艦長になれる階級に昇進する辞令 → 個別に艦長の辞令が発令され就任。
    ヤマトシリーズでは、旧乗組員をヤマトから引き離すための人事異動発令が下って伝達されるシーンがありました。ある程度きちんとしています。
    が、2202では真田さんが古代を艦長代理に、土方司令も次期艦長に任命していますが、これらは職権乱用以前の無権行為になり、監察かつ懲罰対象ものですよね。
    おそらく、
    統合司令官には、任された艦隊の範囲内での人事権が、各艦長には、任された艦の内部での配置換え程度の人事権限はあったのでしょう。
    それでも、通信班などの各班の班長人事は、もっと上の組織の権限だったと思われます。
    適材適所をどうするかは総務部のお家芸ですからね。もっとも、うまく行かない方が多いと思いますが。笑

  10. 山城2199 より:

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    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    パステヤージュ様、今晩は!
    コメントをありがとうございます。
    それと返信が遅れて大変失礼いたしました

    そうなんですよね~2199では割かし嘘を上手くついていたのですが、2202はかなり雑になってしまってほころびが見えてしまっているというのが正直なところなんですよね。
    2202は2199から方向転換を図るるのはよいとしても、成功した部分までなくして欲しくなったですね。

  11. 山城2199 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    kazu様、鋭いご指摘ありがとうございます。
    このあたりも地球防衛軍の検証の課程で取り上げえてゆきたいと思っています。
    来週は少し更新頻度を頑張ってあげてゆきたいですね~