戦艦大和(復原ver)自沈の是非

皆様今晩は!
今回は昨日アップした「何故、大和は坊ノ岬にあったのか?」の内容について、いつも管理人がお世話になっております「鮫乗りのBlog」の管理人こと、鮫乗り様より非常に面白いご指摘を頂きました!(いつもありがとうございます!!)
今回は昨日の記事の補足として、ご指摘された内容について深く考えてみたいと思います。

今回、鮫乗り様から頂いたご指摘は次のような内容でした。

200年祭のために一体どれだけの巨額の費用を投入したのでしょう?
ヤマトの世界から一歩引いて冷静に考えると、技術的には可能でもちょっと非現実的すぎるきがします(笑)

自分で戦艦大和(復原ver)の自沈説を書いておいてあれですが、このご指摘はごもっとも!
戦艦大和のような巨大戦艦を「海底から引き揚げ→元の状態に修復」するには当然、莫大な予算と資源が必要となります。
それを200年祭終了後にあっさりと坊ノ岬の海底に沈めてしまうことは、完全に資源と予算の無駄遣いと思われても仕方がありません。
しかしこれは本当にありえない設定なのでしょうか。

戦艦大和(復原ver)に閣下る費用はいくら?

「200年祭」で戦艦大和を復原するために必要な予算は
①坊ノ岬に沈む戦艦大和の引き上げ費用
②復原費用

の2点です。
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■戦艦大和の引き上げ費用はいくら?
まず①の引き上げ費用ですが、2009年、呉市の商工会議所などが中心となり発足した「戦艦大和引き揚げ準備委員会」(現在は事実上の解散)では、主砲塔や装甲鈑、スクリューなどの引き揚げを検証しており、費用を約20億円前後と見積もっていました。
また、2001年に発生した「九州南西海域工作船事件」で沈没した北朝鮮不審船を引き揚げた際は約59億円の予算がかかったとされています。
これらはいずれも船体の一部、あるいは小型船レベルの引き上げであり、戦艦大和のような大型戦艦の船体を引き揚げるには(技術的には不可能ではないものの)、最低でも数兆円単位の金額が必要になる事は間違いありません。
しかし、これはあくまで現在の技術力で戦艦大和を引き上げようとした場合です。
火星の開発に着手できるレベルまで科学力が発達した未来の地球では、深海に沈む船体の引き揚げもそこまで難しい技術ではなくなっている可能性があり、1兆円もあれば大和の船体の引き揚げは可能であると考えても良いでしょう。
実はここで1兆円としたのには理由があります。
そもそも戦艦大和の建造費は当時の価格でおよそ1億4000万円、現在の価値にすると約3兆円弱かかったとされています。
引き上げだけで3兆円を超えてしまうならば流石に引き上げ計画は実行されないと思いますので、引き上げとして許容される範囲は建造費の1/3当たりが妥当だろうと考えたからです。

■戦艦大和の復原費用はいくら?
約1兆円をかけて引き上げた大和の船体を復原させるにはどのくらいかかるかですが、実はこれはそこまで高額にはならないと考えています。
というのも戦艦大和が建造費に3兆円もかかったのは実戦で使用できる戦艦として建造したからであり、イベント用のモニュメントとして行われる今回の復原は外見が再現できればOKというレベルだったはずです。
これは基本的には大和ミュージアムに展示されている1/10の戦艦大和を原寸大で作るのと同じ感覚であり、「1/10の戦艦大和」の製作費2億1千万円であったことを考えると、その1000倍の2000億円もあれば復元可能だったのではないかと思われます
つまり、「200年祭」で戦艦大和の復原費用は総額で1兆2000億円あたりだったのではないかと考えられます。

東京オリンピックとの比較

1兆2000億円と聞くととんでもない金額に思えるかもしれませんが、実は今年2021年に開催予定の東京オリンピックの予算と比較するとそこまで驚く金額ではありません。
当初はコンパクト化による低予算開催が謳われた東京オリンピックですが、その後、必要とする予算は膨らみ続け、更にコロナ対策も重なり、必要な予算は1兆6000億円にまで達する言われております(最終的には3兆円に達するのではないかといわれていますので恐ろしいです)。
「200年祭」が「東京オリンピック」と同レベルのイベントであると考えられた場合、戦艦大和の復原費用は十分許容可能な範囲であり、加えて、戦艦大和を目玉とすることで、観光業をはじめとする十分な経済的効果も見込めることも考えると、この戦艦ヤマトの復原計画自体は現実と照らし合わせてもそこまでリアルティの欠けた設定ではありません。
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戦艦大和(復原ver)の自沈は無駄か?

ではなぜ、このような巨額な予算をかけて再生した戦艦大和を「200年祭」終了後にあっさりと坊ノ岬の海底に沈めてしまったのか。
勿論、鎮魂の意味もあったと思いますが、もっと現実的に考えるならば、残しておく方が問題が多かったという事につきると思います。
例えば、似たよ東京オリンピックで使用した大型建造物を、オリンピック終了後どうするかが現在でも大きな課題となっていますが、当然、「200年祭」モニュメントとして再生した戦艦大和にも同様の問題が発生します。
施設であるならばまだ他の使い方を考える事ができますが、言ってしまえば原寸大の模型である「戦艦大和」に他の使い道はなく、むしろ呉港の一角を占領しているという意味で邪魔以外のなにものでもありません
また「200年祭」開催中という期間限定であるならばそこまで維持費は必要としませんが、永続的に残すならば当然、かなりの維持費が必要となります。
観光資源として残すという考えもあるかもしれませんが、それは良くて維持費を補填できる程度であり、総合的には残しておくことにあまり旨味がないと思われます。
また、政治的な問題も無視できません。
「ヤマトという時代」の設定では21世紀以降、世界大戦は起きていないという設定ですが、それは国家同士がすべて仲良くなったという訳ではなく、国家間の対立自体は残り続けていると考えるほうが自然です。
特に日本の場合は、戦争史観についていろいろと五月蠅く言ってくる国が近くにあり、戦艦大和の原寸大模型のようなものをいつまでも残しておくと、「戦争の美化だ」と騒ぎだしかねません。
そこで色々問題が発生しないうちに、「200年祭」を締めくくる最後のイベントとして、「戦艦大和」を坊ノ岬の海底に帰す」という事が行われたとしても不思議ではありません。
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ちなみに自沈させた戦艦大和がひっくり返らず奇麗に沈んだのはそのように沈むよう最初から手を入れていた証拠であると思われます。
もしかしたら、坊ノ岬の海底にはちょっとした海底記念館が作られており、「海底に眠る大和を見ることができる」ということができるようになっていたのかもしれません。
そして、その施設が後に拡張されてヤマト建造ドックになったと考えると面白いですね。

コメント

  1. おーすけ より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    2回目の投稿失礼します。

    沈底状態の大和(ヤマト)は各砲塔の角度が一番砲塔がほぼ正面、二番砲塔が90度ほぼ水平、一番副砲がほぼ左45度で仰角20度くらいで微妙に砲ごとに仰角が異なる。
    後部砲塔は明確には見えませんが、沖田艦長の「偽装解除」で後の画面では二番砲塔のように中心線への復帰がないので0度のようです。
    すると、少なくとも左右、仰角を制御する機構が必要ですが、であれば単なる模型ではだめで、それなりの機構が必要かもしれません。
    (複合材などでできてたら軽いので、大袈裟な機構ではないかもしれません)

    そして、これは自分の知識不足かもしれませんが、当時の寸法通りの形を作りつつ、海に浮かべるということは基準か満載かは不明ですが、7万トン前後の排水量とする重量バランスって結構シビアではないでしょうか?

    もっと言えば46センチ主砲、15.5センチ副砲の外見※にどうやって48センチ主砲、20センチ副砲を詰め込んだでしょうか。。
    大和は二番砲塔が左右90度でも多少船体から砲身が出るかくらいだったはずですが、ヤマトは左右90度を指向した際に、船体より大幅に砲身が付き出てますので、大和より、大幅に砲身が長いはずです。
    ※抜錨号令後に砲塔が動いているので少なくとも沈底時点のサイズは原寸のままのはず

    そう考えると、この大和モニュメントをヤマトに仕立てるのはサイズ整合性的にちょっとムリがあると感じてしまいます。

    と、この辺にふれるのはダメなお約束でしょうか(笑)

  2. オールドタイマー より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
     サイズの問題、263mの中に333mを押し込めると言うのを解決するのは、やっぱりあの復元された「戦艦大和」が400m位有ったとするのが一番手っ取り早いのですよねぇ。
     実際、オリジナルのときですら外見は265mだけど中身は500mある何て言われてましたから。

     やっぱりあの戦艦大和は私には「柩」にしか思えないのですよね、納めるだけならガワだけ作れば良いわけで費用も抑えられるし、そのガワも細かく区切ってバラストにすれば自沈させるのも楽に成るのでは?。
     其れにあのカレンダーのイラスト、主砲の装甲の形がちょっと変なんですよ。特報ではジブクレーンが撤去された最終時の艦容をかなり正確に再現しているのにも関わらず。
     あれではカバーにしか見えない、まあ検証不足の単純なミスという可能性の方が大きそうではありますが。

     早く映画館で確かめたい、気温と湿度が上がる四月くらいに成らないと無理でしょうかねぇ、公開が本当に待ち遠しいです。

  3. おーすけ より:

    SECRET: 0
    PASS: 2f7b52aacfbf6f44e13d27656ecb1f59
    全長問題は、偽装?状態で地表に見えているのが正面を向いている一番主砲からなので、少なくとも画像からは見えず不明という理屈は成り立たないでもないかと。
    とはいえ、全長差問題をクリアできないと、モニュメント大和からヤマトが出てくることはできないですよね。
    なのでまだモニュメント大和=ヤマトとも断言できない気がします。

    もしくは見映えその他の要素で2割拡大しての復元という論理が飛び出したり(^^)

  4. kazu より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    海自の護衛艦いずもが1300億円、米国ジェラルド・R・フォードが130億ドル(すごい!)からすると、海自護衛艦まや型でも1680億円。まあ大和の復元、余程の理由がないと国民の理解が得られにくいかもです。
    それはともかく。私は以前の艤装用の方が何か良さそうな気がしなくもないです。最大の理由は艦体のサイズです。全体に一回り大きく、主砲も、おそらく縦横の寸法から艦橋も当然大きくなり、ヤマトが収まらない気がしますが、いかがでしょうか。

  5. 山城2199 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    おーすけ様、コメントをありがとうございます!!
    沖田艦長を「偽装解除」していた時点ではすでに中身がヤマトになっていましたので、実質ヤマトの主砲が動いた(見た目は戦艦大和のままですが)だったのではいかと思われます。
    バランスについては私もあまり詳しくないのですが、戦艦大和は「たらい」と表現されるほど横幅が長く、安定性に優れた船でした
    戦艦大和の残骸で使ったのは主に船体部分でしょうから、新しく作った上部構造物を軽い新合金などで建造されていたとしたらそこまでバランスが悪い事にはならないと思います。

    戦艦大和の船体に宇宙戦艦ヤマトが入る訳ないという事は禁句です!
    戦艦大和と宇宙戦艦ヤマトでは外観が全く違っているのですからそもそも入るはずがないのですが、その点だけは旧シリーズから一貫して考えてはいけない謎です(苦笑)

  6. 山城2199 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    オールドタイマー様、コメントをありがとうございます。
    >あの復元された「戦艦大和」が400m位有ったとするのが一番手っ取り早いのですよねぇ。
    三分割した船体を修復する際、補強などの意味合いでパーツを追加し、もしかしたら本物のより大和より全長が伸びてしまったのかもしれませんね。
    その場合は、全体のバランスをとるために、上部構造物なども一回り大きくなっており、宇宙戦艦ヤマトを内部に収容する事ができたのかもしれません。
    主砲の装甲については、ご指摘の通りミスや検証不足という事もありますが、あるいは細かい所はいい加減に修復されていたという設定なのかもしれません。
    突き詰めてしまえば、この修復された戦艦大和は「200年祭」の為の期間限定のモニュメントであり、この期間が過ぎれば海中処分されることになっていました。
    この場合、艦容の再現自体は正確にやるでしょうが、目につかないような細かい所は「それなりで良い」とされていてもそこまで不思議な話ではありません。

  7. 山城2199 より:

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    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    おーすけ様、連投のコメント、誠にありがとうございます。

    >もしくは見映えその他の要素で2割拡大しての復元という論理が飛び出したり(^^)

    この設定はわりと正解なのではないかと思います。
    もしそうであるならば、モニュメント大和の主砲は実は46センチではなく48センチになっており、宇宙戦艦ヤマトの主砲の大きさの説明もつくのではないかと思います。

  8. 山城2199 より:

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    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    kazu様、コメントをありがとうございます。
    「200年祭」がオリンピックのような世界的イベントとして宣伝されていれば、お祭り気分でこのような豪勢な無駄遣いも許されたのではいかと思います。
    船体の大きさはやはり突き詰めてしまうと問題が多過ぎますね。
    この点だけは、旧シリーズ化から一貫して「細けーことはいいんだよ!」という事なのだと思っています(爆)

  9. 鮫乗り より:

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    PASS: 1a538da28fe818e3944eeb2efef15a36
    山城2199様、おはようございます。

    コスト問題と全長問題をネタに記事を書いてみました。
    http://blog.livedoor.jp/monocarver/archives/52274900.html

    書いてからよくよくみなさんのコメントを読んだら、同じようなことを考えていたようで、結局オールドタイマーさんの「柩」ネタになってしまったようです(笑)

  10. 山城2199 より:

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    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    鮫乗り様、今晩は!
    返信が遅れてしまい大変失礼いたしました(汗)

    鮫乗り様の検証記事を読ませていただきましたが、非常に素晴らしい内容で感服いたしました。
    まあ宇宙戦艦ヤマトがどうやって戦艦大和の艦内に入っていたかを考えると、どうしても似た結論になってしまうと思います。
    この辺りを「ヤマトという時代」ではどのように設定づけているかちょっと楽しみです。
    緊急事態も延長が決まり、3月の公開はほぼ絶望的だと思いますが、あれこれ考えながらののんびりと公開日を待ちたいと思っています。