意外に細かかった坊ノ岬海戦の護衛艦描写

皆さま今晩は!
本日10月20日は現存している戦艦大和の写真の中でも特に有名な1枚であるこの写真が撮られた日です。

83年前の本日、高知県の宿毛湾沖で全力予行運転中の姿を捉えたものですが、戦艦大和の力強さ、そして美しさが詰まった1枚だと思います。
当時の日本では難しかったと思いますが、この全力予行運転が動画で撮影されていれば・・・と思わずにはいられませんですね。
ただ今年、米国立公文書館の資料から戦艦大和の初のカラー映像が発見されており、大和型戦艦が映った動画や写真が今後も発見される可能性はゼロではありません。
今後も大いに期待したものですね。

さて、今回はせっかくですので戦艦大和に関するネタを。
宇宙戦艦ヤマト放送50周年を記念して今月18日までスターチャンネル公式YouTubeチャンネルにて、『宇宙戦艦ヤマト[HDリマスター]』第1話~第5話の特別無料配信が行われていました(※現在は配信終了)。
せっかくですので改めてじっくり視聴してみたところ、第2話の坊ノ岬海戦の説明シーンで意外な発見がありました。

この坊ノ岬沖海戦については、以前アップした「ヤマトにおける「大和の最期」トリビア」でも取り上げ、大和の描写に関しては現在の研究からみると間違いが多いと書きましたが、作中でチラチラ描かれている第2水雷戦隊については映像が奇麗になっていることもあって、艦名を特定できるくらい細かく忠実に描かれていたという事に気づきました。

非常に面白かったので作中の描写から艦名を特定してみました。

駆逐艦初霜・涼月

一番わかりやすいのが19分13秒から始まるこの上空から見たカット。
陣形的に大隈海峡通過中にとっていた第一警戒航行序列であることが分かりますので、大和を挟んで右の駆逐艦が「涼月」(秋月型駆逐艦)、左の駆逐艦が「初霜」(初春型駆逐艦)であることが分かります。
日本海軍最大の駆逐艦であった秋月型らしく、ちゃんと右の涼月が左の初霜より大型に描かれており、ちゃんと駆逐艦が細かく描き分けられていたことが分かります。

第三警戒航行序列描写

次にカット的には戻りますが19分から始まる「1945年、押し寄せる300を超えるアメリカ艦隊に戦いを挑むべく戦艦大和は、護衛艦10隻を従え、日本海軍最後の艦隊として出撃していったのである。」のナレーションで描かれたこのシーン。
このシーンでは大和以外に4隻の駆逐艦が描かれていますが、しっかり確認できるのは、陽炎型駆逐艦と思われる3隻。
私は当初、このシーンは有名な陽炎型駆逐艦を護衛艦として描いただけかと思っていましたが、「坊ノ岬海戦」の記録と照らし合わせてみると、何も考えずに描いたわけではなく、大隈海峡通過後にとった「第三警戒航行序列」に基づく配置と一致していることが分かります。

ちなみにこの「第三警戒航行序列」によれば、位置的に一番手前の陽炎型は「雪風」、左端の駆逐艦は「霞」、この間は陽炎型ではなく前級の朝潮型駆逐艦ですが、「朝潮型」を発展させたのが「陽炎型」であり、両者は外観的によく似ているので描写的には間違っていません。
さらに右に見える陽炎型は位置的に「磯風」(あるいは「浜風」)であることが分かります。
なお、左奥に描かれている駆逐艦はおそらく「朝霜」(夕雲型駆逐艦)であると思われます。
この「朝霜」は坊ノ岬海戦で唯一乗組員が全員戦死することになった艦ですが、ひそかにヤマトに登場していた事実に気づいてちょっと感動してしまいました。

駆逐艦霞

次のカットは19分34秒から始まる米機動艦隊の第一次攻撃が始まったシーンに登場する駆逐艦。
第三警戒航行序列的にはこの位置にいるのは「朝霜」のはずですが、シルエット的に「陽炎型」ないし「朝潮型」に見えるので、「霞」であると思われます。
実際、史実において第一次攻撃が始まった時点で「朝霜」は機関部の故障で艦隊から落後しているので、後ろにいた「霞」が対空戦闘のため、前に出てきたとしてもおかしくありません。
この点においてもわりと史実に忠実に描かれていたことが分かります。

駆逐艦雪風

最期に紹介したいのが、21分03秒の大和爆沈のシーン
このシーンの左側に駆逐艦が一隻確認できますが、この艦は「雪風」であることは確定です。

というのも、この大和の爆沈シーンは写真として残されており、この写真に写っている艦は「雪風」であることが特定されています。
おそらくヤマトにおけるこのシーンはこの写真をそのまま模写したと思われますので、ここに描かれている艦は「雪風」と断じていいでしょう。

それにしてもカット的にはわずかなのに陽炎型駆逐艦とわかるシルエットをちゃんと描いていることに感動です。


以上が宇宙戦艦ヤマトで描かれた「坊ノ岬海戦」での第2水雷戦隊の描写でした。

この「坊ノ岬海戦」はわずか3分程度の描写ですが、第2水雷戦隊については予想以上に史実に基づく描写がなされていたことを知って心から感動しました。
2話の絵コンテは故・松本零士先生と故・石黒昇氏の2人がされたという事ですが、おそらくこの「坊ノ岬沖海戦」パートは松本先生が担当されたのではないでしょうか。

今となっては確認する術はありませんが、この艦隊描写の細かさに気づいて強く確信しました。
じつに松本零士先生らしい海軍愛にあふれた描写だったと思います。

近い将来製作されであろう庵野版「宇宙戦艦ヤマト」でもこの「坊ノ岬海戦」の描写は復活すると思われますが、願わくばオリジナル版に負けない描写にして欲しいものですね。

コメント

  1. 土門くんしなないで より:

    ヤマトと他のSFアニメ作品の一番の違いかも。特にパート1は、その前段が現実の歴史ですものね。