皆様今晩は!
以前、Twitter(現X)で「なぜ山南さんは地球防衛艦隊司令官という重職でありながら一佐なのか」という議論が見かけました。
この件については私も以前「山南艦長の階級問題」の記事の中で検証してみたことがありますが、この時は、地球防衛艦隊は再建途上であり、そこまで規模も大きくなかったため、繋ぎ人事として山南さんが抜擢されたのではないかと結論付けました。
しかし、その後、2022年の福山イベントでのトークショーで山南さんの階級についても面白い設定が明らかにされたので、改めて山南さんの階級問題を取り上げてみたいと思います。
地球防衛艦隊司令官=地球艦隊の総指揮官ではない?
まず大前提として山南さんの就いている「地球防衛艦隊司令官」の権限を誤解していたのかもしれません。
オリジナルシリーズでは「地球防衛艦隊司令官」は文字通り地球艦隊の総司令官であり、実戦部隊の長として「防衛軍(司令)長官」の藤堂に次ぐ重鎮でした
これまで私はリメイク版における「地球防衛艦隊司令官」の地位をオリジナル版と同様の地位として考えていましたが、リメイク版における「地球防衛艦隊司令官」は実はそこまでの重鎮ではなかった可能性があります。
その根拠はリメイク版における地球防衛軍の成立の流れです。
2202の設定では、地球防衛艦隊はガミラス戦争後に従来の国連軍を解体し「統合軍」として再編した、とあります。
この「統合軍」構想は戦後に誕生したものではなく、ガミラス戦争の中で既に計画されていたかもしれませんが、軍令も軍政も異なる各国の軍組織を果たして2年程度で解体し、完全な新組織として再編する事が可能でしょうか?
私自身は不可能であると思いますし、急いで再軍備化をすすめなければならない2202当時の地球の状況を考えた場合、従来のシステムはある程度はそのままに、不都合な部分を修正するという流れの方が現実的です。
あくまで私の勝手な予想になりますが、「ガミラス戦争」後に行われた国連軍の解体・再編とは、
①各管区が有していた戦力はそのまま「管区艦隊」(仮称)として存続(平時の軍政・軍令は各管区が有する)
②非常時にそれらの管区艦隊を統合して運用する「統合司令部」を常設組織として設置
③「統合司令部」直属の常備軍として波動砲艦で編成された「地球防衛艦隊」の設置
の3つだったのではないでしょうか。
つまりリメイク版における地球連邦艦隊は、オリジナル版のような地球が有する唯一無二の実働部隊という訳ではなく、以下の組織図のように「統合司令部」が運用する実働部隊の1つに過ぎなかったのではないかと思われます。
そして、この実働部隊は編成されたばかりで艦隊規模としてはそこまで大所帯ではなかったこともあって、司令官も正規の将官ではなく、「代将」という形で「一佐」クラスの人材が任命されることになったのではないでしょうか。
もっとも、時間断層では波動砲艦隊の大量建造が始まっていたので、いずれはこの常備艦隊の艦隊強化とそれに伴う人事の刷新は計画されていた可能性はあります。
ただ、当初は時間断層の存在がごく一部の関係者しか知らない超極秘事項だったこと、さらに小説版によれば波動砲艦隊の量産すら極秘にすすめられていた事(実際、物資の流れに疑問を感じただけで平田さんが閑職に飛ばされる程)を踏まえると、佐官が新設の「地球防衛艦隊」の司令官に任命されたということは、計画している艦隊が小規模であるという誤解を与えることにもつながり、ちょうど良い目くらましにもなると判断され、「一佐」の山南さんが選ばれた可能性もあります。
シビリアンコントロールの一環?
また、波動砲艦隊の指揮官に「佐官」クラスが任命されたのはシビリアン・コントロールの一環だった可能性もあります。
というのも、どうしても政治的な影響力を持つ将官クラスに波動砲艦隊の指揮権を与えた場合、その力を背景に暴走する事も十分考えられます。
藤堂長官も芹沢副長も地球の防衛のために「波動砲の力は必要である」と考えている反面、それが悪用された場合の危険性も十分に認識していたと思われます。
実際、惑星をも破壊する武器を有する波動砲艦が1隻でも反乱を起こした場合、その鎮圧は非常に困難を極めますし、2202におけるヤマトの反乱はまさにその問題を浮き彫りにしていると思います。
ヤマトの反乱の場合は1隻でしたし、その行動理念も司令部も理解できるものでしたので、幸い、そこまで大事になる事はありませんでしたが、もし、波動砲艦隊の指揮を任せた司令官がその軍事力を背景にクーデターを起こした場合は、もはや止める術がありません。
また、司令官が将官クラスになると、どうしても軍令や軍政の影響力を持つようになってしまい、クーデターのリスクがどうしても高まってしまいます。
そのため、そのような事態を防ぐために波動砲艦他の設置においては
①艦隊司令官に政治的な影響力を持ちにくい佐官クラスを配置し、権限を戦場にとどめる
②同じ佐官を司令官とする同規模の波動砲艦隊を複数設置し、互いに監視させる
といった複数の反乱防止策を同時に置き、波動砲艦隊の制御を行おうとしたのではないでしょうか。
このように考えると、アンドロメダ級の艦長がいずれも佐官クラスであったこと、そしてアンドロメダ級を複数同時に就役させたのにも納得です。
急激な波動砲艦隊の増強は、外敵から地球を守るだけではなく、波動砲艦隊の暴走を招かないようにするためのリスク分散だったのではないでしょうか。
なお、2202後半ではアンドロメダ級とドレッドノート級はAI制御の無人艦にシフトし始めていましたが、これも案外、クルー不足という事情のほかに、波動砲艦隊はAI制御の無人艦にすることでクルーによる反乱を防ごうという側面もあったのかもしれません。
山南さんは、AIを信用しておらず、有人艦である事に拘っていましたが、後方の司令部からすれば、(AIと違って)誤断を繰り返し、しかもコロコロ感が方が変わる人間の方が信用できず、そんな人間に波動砲艦隊を任せるほうが、非常に危険な状態であるという認識だったのかもしれませんね(実際ヤマトが反乱を起こしたのであながち間違っているとは言えませんし)
なぜ山南さんを昇進させようとしたのか
ところで、2022年の福山イベントでのトークショーで2205の山南さんについて非常に興味深い設定が明かされていました。
それは「ガトランティス戦役後、山南さんは昇進と共に地球防衛艦隊司令の地位への留任を示されたが、それらを断り、閑職ともいえる教育艦隊司令に自ら就任した」というものです。
ここで注目したいのは、山南さんの昇進が示されたのは「ガトランティス戦役後」であることです。
ガトランティスの戦力が強大過ぎたということもありますが、「ガトランティス戦役」では最終的に数百隻にも及ぶ波動砲艦隊を指揮する事になった山南さんなので、本来ならばこの時点では宙将に昇進させてもおかしくはありませんでした。
ところが、ガトランティス戦役においては一貫して一佐に据え置かれ、「宙将」の昇進が示されたのはむしろ「ガトランティス戦役後」の軍縮になってからです。
これは何故でしょうか?
1つには昇進させることで「地球防衛艦隊司令」の地位に留任するよう説得しようとした可能性があります。
ただ私はむしろ、「ガトランティス戦役後」において状況が変化し、山南さんを昇進させる必要が出てきたのではないかと思います。
そして、その状況の変化とは、時間断層消失に伴う極東管区派閥の発言力の低下ではないかと考えています。
恐らく「ガミラス戦争」後は時間断層を持つ「極東管区派閥」が地球において圧倒的な発言力を有し、それゆえ、戦後に編成された「地球防衛軍」においては極東管区閥が重要なポストを独占していたのだと思います。
しかし「ガトランティス戦役」後、「時間断層」が喪失したことにより、極東管区閥は大幅に発言力を低下させ、さらには各管区艦隊も波動砲艦を建造するに至って、防衛艦隊司令部は、各管区艦隊を統制下に置くことが難しくなってしまったのではないでしょうか?
実際、各管区司令官達は将官クラスが就任しているでしょうから、佐官である山南さんが各管区艦隊に命令する事は不都合が生じたと思います。
それでも「ガトランティス戦役」までは圧倒的な「極東管区派閥」の発言力と、波動砲艦隊を独占しているという実力で各管区艦隊を統制することが出来たと思われますが、影響力の低下と各管区艦隊の波動砲艦完成に伴う発言力の向上で、それも限界に達してしまったのではないでしょうか。
それゆえ、あわてて山南さんを昇進させて何とか統制を取り戻そうとしたものの、山南さん本人にやる気な無かったこともあってその計画は失敗に終わったと思われます。
2023年の福山イベントでは、対デザイアム迎撃作戦‐通称「オペレーションDAD」が極東管区主導で進められているものの、計画責任者である藤堂司令官が人材不足や兵力不足で滅茶苦茶苦労しているという設定が明かされています。
おそらく、この時点で他管区艦隊の協力を得られず(極東管区以外は対ボラーを重視しているためと思われます)、また、直属の防衛艦隊もその司令官は他管区の軍人が就任している可能性が高い事から地球防衛艦隊司令部としても一丸で対デザイアム作戦が用意できなかった可能性が高いです。
この辺りの地球の防衛作戦のちぐはぐさが「3199」第1章での地球占領という最悪の事態を招いてしまうのではないでしょうか。
3199本編内でしっかり描かれるかは分かりませんが、この辺りの政争も3199では重要なポイントになりそうですね。
コメント
お久し振りです。 航宙特務隊です。 改めて本年もよろしくお願いします。
山城様がこの記事で唱えてらっしゃる地球艦隊の組織図ですが、読んでみて同感であると考えました。その理由は三つあります。
一つ目はアンドロメダ級の名前の由来です。2202では極東管区がかなりの力を有していました。アンドロメダ級の乗員もほとんど(確認出来る限りではすべて)日本人です。しかし2205アスカヒュウガのようにアンドロメダ級には日本語由来のものではなく、ギリシャ神話由来のものが最初に使われました。それはこれまでの国家という枠組みを超え一つの世界としてまとまろうとした。その為に今の民主主義,そして連邦制を極めたといえるギリシャ世界のような国にしたい。その意志表明として地球連邦政府直轄艦隊の旗艦級として命名されたのだと考えます。
二つ目は2205で登場した「護衛隊」設定です。これまでは地球連邦軍内の組織改編の結果生まれたものだと思ってきましたが、ガトランティス戦役からの混乱期にさらに混乱をもたらす組織改編を行うのかというが出てきました。 ですが、山城様のこの説なら地球直轄艦隊のほかに各管区艦隊独自の組織設計もできるのではないか? ヤマトは極東(日本)管区艦隊の一員ではないかと考えると、「護衛隊」というのはもともと極東(日本)艦隊の組織を構成する要素であることではないかという説明がつきます。
三つ目はパトロール艦の絡みでよく設定だけ登場する軽装甲巡洋艦です。地球にはすでに村雨級という立派な巡洋艦があり、2202の波動エンジン搭載で一定レベルのガトランティス艦なら撃沈させることが出来る程度には強力なものとなっています。なのにわざわざ新規で巡洋艦を設計した。別に貫徹力が変わるわけではないのになぜか? ここでも地球直轄艦隊と各管区艦隊は別と仮定すれば、
村雨級→各管区向け
軽装甲巡洋艦→直轄艦隊向け
というように振り分けることが出来、新規設計艦を作る理由にもなります。
以上、私がこの説に賛成する理由を述べさせていただきましたが、二つほど異議を唱えさせていただきたいところがあります。一つ目は「AI艦」に関する考え方です。山城様は波動砲艦隊の今後の方針の一つとしてAI艦があるのではないかと述べておられますが、私は波動砲艦隊が反乱を起こした時の危機管理要員、つまりはイランの革命防衛隊のようなものを作ろうとしたのではないかと考えます。その理由としては2202時の各管区艦隊は波動砲艦隊に比べて貧弱でありストッパーにはならないと考えたからではないでしょうか?
二つ目はこのような組織図は(実際はどうであったあれ)ガミラス戦争時もあったのではないでしょうか?ヤマトシリーズ有名な「大地は干上がり~」のところで普通なら「地球の戦力は」としてもいいところをわざわざ「地球防衛艦隊は」と固定しています。つまりこの時点で「地球防衛艦隊」もしくはそうあらわされる組織が存在していた。ガミラス戦争勃発時は各管区艦隊の混成だったかもしれない(ヤマトという時代の第一次火星沖海戦で艦隊戦力としかあらわされていないように)明確な組織はなかった。だがその後少し時間が空いたので「国連軍」という形で各管区からいくつか船と人員をもらい国連直轄の艦隊を組織したと思います。そしてそれが2202で正式な組織名称として「地球防衛艦隊」とされた…と考えます。だとすれば「ヤマトという時代」でキリシマ艦隊が「日本艦隊」として紹介されていたのに対し2199冒頭では「第一艦隊」と紹介されていた理由も、「地球防衛艦隊の第一艦隊だから」と説明できます。
最期に2205における極東管区の発言力についてです。2205では極東管区の発言力が低下しました。私はその理由として各管区で波動砲艦(D級またはA級由来のもの)が扱えるようになったからだと思います。波動砲艦が(おそらく)極東管区の一部で採用されている点です。先に述べたとおり極東管区艦隊が護衛隊というシステムを導入しているのだとするのならば、そこに波動砲艦たる「ヒュウガ」がいるということは波動砲艦を各管区レベルで扱えるようになったのだと思います。各管区で復興に差があり、もし実力がある管区だけが波動砲艦を持てば力の不均衡が生まれてしまう。そしてそこに不満が生じかねない。だが各管区すべて配れるほど波動砲艦が作れなかったので2202時点では波動砲艦は地球防衛艦隊のみが持てた。だがガトランティス戦役で大量に波動砲艦が作られたので各管区に波動砲艦を配ることが出来るようになった。その結果唯一の波動砲艦、ヤマト級を持っていた極東管区の影響力が相対的に下がったのだと思います。
航宙特務隊様、お久しぶりです。
こちらこそ2024年もよろしくお願い致します。
これまた熱いご感想、誠にありがとうございます!
今回ご指摘されている部分については実は私が別の考察記事で書こうと思っていることに強く関係してきます。
そのため、今回の内容については具体的なご返答は差し控えさせていただきます。
リアルの状況次第ではありますが、今週の土日にはアップしたいと考えております。
よろしければそちらも合わせて読んで頂ければ幸いです!
今後とも「ヤマトな日々」をよろしくお願い致します!
原作者のアタマぢゃあ此の構成は無理だったヮねぃん。
ヴェネター級ヒューベリオン様、返信が遅くなってしまい申し訳ございません。
コメントをありがとうございます。
やはり考えると、山南さんが昇進しなかったのは政治的な理由しかないと思うんですよね。
わりとガミラス戦争後から2205開始までの地球連邦の内幕は色々ヤバい話が出てきそうであり、それだけでひとつの外伝が作れそうですね。
成程、確かに代将なら司令官足る大佐ですし話が分かります。
それに地球連邦での軍の政治的影響力を抑えると言う意味なら司令官も艦長と同じも佐官となるのも無理じゃないでしょう。